我が国では急速に高齢化が進展しており、この超高齢社会における問題に要介護状態の原因のひとつに「サルコペニア」が存在する。サルコペニアは筋肉量の減少と筋力の低下を特徴とした症候群である。一方食塩感受性高血圧とは、食塩摂取により惹起される本態性高血圧症であるが、最近高血圧患者において下腿骨格筋にNa+が蓄積し、骨格筋が食塩感受性高血圧症の病態に関与することが報告された。 一方、レナラーゼは主に腎で発現する血中酵素であるが、食塩負荷において血圧調節に関与することが報告されている。このレナラーゼが骨格筋においても発現があり、また白筋と赤筋における発現の差異を突き止めた。 本研究の目的は、食塩感受性高血圧における骨格筋の関与とレナラーゼとの関連を明らかにすることによるサルコペニアの病態の解明である。 昨年度入手した本研究の主要物質である「レナラーゼ」遺伝子を欠損させたマウスと同系列のワイルドタイプマウスを並行して飼育し、①ワイルドタイプ0.3% NaCl餌を摂取群、②ワイルドタイプ8%NaCl高食塩餌を摂取群、③レナラーゼノックアウト0.3% NaCl餌を摂取群、④レナラーゼノックアウト8%NaCl高食塩餌を摂取群の4群にて実施し実験した。比較内容は、体重測定や筋力の測定、腎臓と骨格筋を採取し、各臓器の重量および全RNAを回収した。次世代シーケンシング(NGS)による解析を実施した結果、いくつかの変化が認められたが、特にミオシン重鎖アイソフォームに差異がみられた。更なる解析のためリアルタイムPCRにおいても同様に差異があることを確認した。同様にタンパク質の発現においても確認した。 さらに、本研究に関連するヒト対象実験を実施することが出来た。ヒト対象実験では塩分摂取の多少により筋力および体脂肪率に有意差があることを確認することが出来た。
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