研究課題/領域番号 |
18K17981
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
小原 圭将 東邦大学, 薬学部, 講師 (90637422)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膀胱平滑筋 / ドコサヘキサエン酸(DHA) / エイコサペンタエン酸(EPA) / プロスタノイド受容体 / n-3系多価不飽和脂肪酸 / 胃底平滑筋 / 回腸縦走筋 / 結腸縦走筋 |
研究実績の概要 |
本研究では、膀胱平滑筋や消化管平滑筋に対するn-3系多価不飽和脂肪酸の効果を検討することを目的として、これらの平滑筋の収縮機能に対するドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などの魚油に含有されるn-3系多価不飽和脂肪酸の影響を検討した。 膀胱平滑筋では、DHAは膀胱の自発活動や経壁電気刺激(EFS)により生じる収縮反応にはあまり影響を与えなかったのに対し、EPAはむしろ促進的に作用し、膀胱の自発活動を増強させるとともに、経壁電気刺激(EFS)により生じる収縮反応を増強した。EPAの有するこの性質は、過活動膀胱の誘発因子となりうる可能性があるが、低活動膀胱患者にとってはこの性質が有益となる可能性がある。EPAの増強作用にはある種のチャネルの活性化が関与する可能性を想定しているが、詳細なメカニズムについては今後の検討課題である。また、各種プロスタノイドを作用させることで膀胱のEFSによる収縮反応や基礎張力を増強させた場合、DHAはトロンボキサンA2(TXA2)誘導体であるU46619による増強反応を強力に抑制することが示された。したがって、TXA2などが膀胱平滑筋で増加した場合、DHAがこれにより生じる膀胱の過活動膀胱を抑制する可能性が示唆された。 また、n-3系多価不飽和脂肪酸の効果が他の平滑筋においても普遍的に存在する可能性を検討するため、胃底平滑筋、回腸平滑筋、結腸平滑筋等の消化管組織を用いて、各種刺激薬による収縮反応に対するn-3系多価不飽和脂肪酸の効果を検討したところ、DHA、EPAはいずれの消化管組織においても各種プロスタノイドによる収縮反応、非プロスタノイド類による収縮反応いずれも抑制した。したがって、消化管平滑筋組織ではこれらの脂肪酸は運動機能に対して抑制的に制御する可能性があるが、このメカニズムについて今後の研究課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はDHAとEPAの効果は同一であると想定していたが、予想とは異なり、膀胱平滑筋では違う作用が起こることを発見した。特に、EPAの増強作用は、いくつかの阻害薬により抑制されるという予備データが得られている。また、消化管組織においても、各種刺激薬だけでなく刺激薬以外を用いて細胞内情報伝達を活性化させることで、DHA、EPAの非選択的な抑制効果のメカニズムの解明に着手しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、膀胱平滑筋及び消化管平滑筋の収縮機能に対するDHA、EPAの作用の詳細なメカニズムを検討していく予定である。EPAの膀胱収縮増強作用に関しては、各種チャネル阻害薬を用いることで、そのメカニズムの解明を試みる。消化管組織でのDHA、EPAの抑制作用に対しては、これらの脂肪酸が受容体活性化以降の細胞内情報伝達系を抑制している可能性があるため、この可能性を検討していく。ただし、新型コロナウイルスの影響で現在、実験の中断を余儀なくされており、研究がどの程度達成できるかで不透明な状況である。
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