今回、WDR6の特異的な発現部位を調査するために、リアルタイムPCR法を用いて野生型マウスの各組織におけるWDR6の遺伝子発現解析を行った。その結果、脳組織、副腎、そして褐色脂肪組織や白色脂肪組織に強い発現が確認された。この結果に対し、カロリー制限(CR)において白色脂肪組織の脂質代謝が亢進する点とCRにおいてWDR6の発現が低下するという関係性からWDR6が脂質代謝に深く関わると予測した。そこで今年度は脂肪組織に注目し、白色脂肪組織におけるWDR6の機能を解析するために網羅的な遺伝子発現解析を行った。 まずは野生型の自由摂食群(WT-AL)、カロリー制限群(WT-CR)、WDR6 KO型の自由摂食群(KO-AL)、カロリー制限群(KO-CR)の4群を用意した。これらのマウスから皮下脂肪由来の白色脂肪組織からRNAの抽出を行い二分した。この抽出したRNAを用いてRNA-seq解析とqPCRを行った。 RNA-seqの解析結果から、WT-ALと比較してWT-CR/KO-AL/KO-CRの3種では様々な遺伝子に発現変化が確認された。そしてそれらの遺伝子に対してqPCRを行った。その結果、RNA-seqとqPCRの結果について相関関係が高い遺伝子が13種発見された。これらの13種の遺伝子はWT-ALを基準として考えた場合においてWT-CR / KO-AL / KO-CRの3種において同様の遺伝子発現変化を生じている。つまり、WDR6の遺伝子発現を負に制御することで食事制限することなく、カロリー制限と同様の状況になっていることを示している。 今回の結果から、WDR6が脂質代謝において重要な機能を有していることが強く示唆された。今は飽食の時代となり過食や肥満が社会問題となっている。今回の研究において得たデータは今後の研究において非常に重要な足掛かりになるだろう。
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