研究課題/領域番号 |
18K17990
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
柴田 紗知 福山大学, 生命工学部, 助教 (90803940)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 変形性関節症 / 食品機能成分 / 加齢性疾患予防 / 老化促進マウス |
研究実績の概要 |
超高齢化社会の現代において、医療費や介護費用を削減するために健康寿命を延ばすことは社会的課題であり、食生活による健康寿命の延伸も期待されている。ロコモティブシンドロームの主な疾患である変形性関節症や骨粗鬆症は、要支援・介護状態を招くとともに健康寿命を縮める主な要因の一つであることから予防や進行抑制が極めて重要である。本研究の目的は、変形性関節症を予防する食品機能成分による骨粗鬆症の予防効果を明らかにし、双方に有効な食品機能成分を解明することである。 2019年度は、軟骨細胞保護効果と破骨細胞分化抑制効果を示す食品機能成分について明らかにするためスクリーニング試験を行うとともに、作用機構の解明を進めた。また、効果が期待される食品機能成分については経口摂取による有効性を明らかにするため、老化促進マウスSenescence-Accelerated Mouse Prone 8 (SAMP8)への経口投与実験を行った。食品機能成分を1種類投与する実験と、2種類の食品機能成分を複合投与する実験を一年間にわたって行った。飼育期間中には握力測定等の運動機能解析を行うとともに、運動機能と認知機能は密接に関連があることから行動科学試験も実施した。さらに、短期間に高濃度の食品機能成分を経口投与する実験を行い、飼育終了後には大腿骨のCTを撮影した。現在は食品機能成分による軟骨細胞保護効果や破骨細胞分化抑制効果について作用機構のさらなる解明を行うとともに食品機能成分を経口摂取することによる骨や軟骨への影響についての組織化学的解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も、軟骨細胞保護効果及び破骨細胞分化抑制効果を示す食品機能成分を明らかにするためにスクリーニング試験を実施した。軟骨細胞保護効果が明らかでない食品機能成分については、軟骨細胞の保護効果を検討した。そして軟骨細胞保護効果が明らかとなった食品機能成分については破骨細胞の分化抑制効果を検討した。その結果、軟骨細胞保護効果及び破骨細胞分化抑制効果を示す食品機能成分を新たに見いだすことができた。 加えて、細胞レベルで破骨細胞分化抑制効果を示した食品機能成分について老化促進マウス(senescence accelerated mouse;SAM)への経口投与実験を行った。10ヶ月にわたって2種類の食品機能成分について投与実験を行うとともに、食品機能成分を複合投与することにより相加相乗効果を示すか検討を行った。飼育期間中には運動量測定・握力測定・Pain test等の運動機能測定を実施した。さらに、運動機能と認知機能には関連がみられることから、新奇物体認識試験や強制水泳試験等の行動科学試験を実施した。その結果、単独投与実験において握力の維持効果を明らかにしたとともに、複合投与実験において、単独投与と比較してより高い運動機能維持効果や認知機能維持効果を示すことが分かった。 また、破骨細胞分化抑制効果について作用機構を明らかにするために、破骨細胞関連マーカーであるカテプシンK等について遺伝子レベルで検討を行い、食品機能成分処理による遺伝子発現への影響を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、経口投与実験を実施したマウスの臓器を用いて、サフラニンOファストグリーン染色・Trap染色等の染色実験や骨密度・骨塩量の測定を実施し、食品機能成分を経口摂取することによる骨や軟骨への影響について組織化学的な解析を行う。 さらに、食品機能成分による軟骨細胞保護効果と破骨細胞分化抑制効果について作用機構の解明を進める。タンパク質発現についてはウエスタンブロット解析を用いて破骨細胞の分化や骨吸収と関連するNF-κB経路に関する検討を行う。また、破骨細胞の分化と関連する骨型酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼやI型プロコラーゲン-N-プロペプチド等についても検討する。さらに遺伝子レベルでの解析として、mRNA発現量を経時的に調べる。破骨細胞の多核化に必須であるdendritic cell-specific transmembrane protein等の発現について、Real-time PCRを用い引き続き検討する。 くわえて、食品機能成分が骨形成へ与える影響についても検討を行う。骨芽細胞の分化に必須の転写因子であるrunt-related transcription factor 2やactivating transcription factor 4についてタンパク質レベルや遺伝子レベルで検討を行い、食品機能成分が骨芽細胞に与える影響について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入処理が間に合わなかったため。次年度使用額(25927円)については物品費に充てる。ウエスタンブロット関連試薬を購入する際に使用する。
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