本研究では、冠動脈疾患を有する透析患者を対象に、薬剤溶出性ステント留置時・中間期・慢性期の冠動脈造影施行時に責任病変および非責任病変に対して光干渉断層法(FD-OCT)による血管壁性状の定性および定量評価を行う。ステント留置時に栄養状態の評価を行い、低栄養状態の有無により2群に分け、非責任病変の動脈硬化進行の有無、ステント内の新生内膜の被覆状況や組織性状に及ぼす栄養状態の影響、さらに心血管イベントの発症について評価を行う。 2021年3月までに41名が登録された。baseline時の低栄養群は16症例(39%)であった。臨床背景(年齢・性別・基礎疾患・内服状況)は両群で有意差は認めなかった。脂質低下療法、ミネラル・骨代謝(Ca/P積)にも両群で有意差は認めずコントロール良好であった。身体測定では、上肢での測定値はいずれも低栄養群で有意に低値であった。「InBody」での測定では、SMIが低栄養群で低い傾向であった。定量的冠動脈造影評価では、責任病変の病変長・径および急性期獲得径も両群で有意差は認めなかった。非責任病変でも同様であった。 FD-OCTを用いた冠動脈プラーク組織性状評価では、石灰化プラーク(特に石灰化結節)の割合が低栄養群で高く、脂質プラークは非低栄養群で高い結果であった。 中間期では、責任病変の新生内膜はneoatherosclerosis(石灰化)の割合が低栄養群で高かった。非責任病変では、石灰化プラークの割合や石灰化の角度が低栄養群で有意に高い結果であった。多変量解析では、石灰化プラークの変化を予測する因子として「GNRIでの低栄養」・「血清P値」が挙げられた。 なお、慢性期のFD-OCTが施行できた症例が少なく、2群での評価は困難な状況であった。中間期・慢性期の心血管イベントには2群間で有意な差は認めなかった。
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