本研究では、現在の日本人高齢者の食品摂取の多様性を適切かつ簡便に評価可能な『改良版食品摂取の多様性得点(MDVS)』を開発し、その妥当性およびフレイル予防に対する有用性を検証することを目的としている。 今年度は、前年度までの解析結果や課題をふまえ、開発方法の見直しを行い、MDVSの試案作成、栄養素等摂取量およびフレイルの新規発生との関連を検討した。MDVSの構成食品群を検討するため、平成29年国民健康・栄養調査における65歳以上の食品群別摂取量のデータをもとに、主菜・副菜・汁物を構成する食品群の総摂取量に対する各食品群の寄与率を算出し、DVS(熊谷ら、日本公衛誌、2003)を構成する10食品群に加え、「乳製品」、「その他の野菜」を構成食品群として追加することとした。また、加点方法はDVSと同様、各食品群の1 週間の食品摂取頻度をもとに、ほぼ毎日食べる食品群の数を評価することとした。地域高齢者を対象とした疫学データを用いて、性・年齢・エネルギー摂取量を調整し、栄養素等摂取量との相関を検討した結果、MDVSとたんぱく質エネルギー比率、脂質エネルギー比率、食物繊維、カリウム摂取量との間に有意な正の関連がみられ、炭水化物エネルギー比率との間に有意な負の関連がみられた。また、MDVSと14の栄養素(たんぱく質、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅)の必要量を満たす確率およびその平均との間に有意な正の関連がみられた。さらに、MDVSとフレイルの新規発生との関連を検討した結果、有意な負の関連がみられた。一方、これらの関連解析の結果について、DVSと比較したところ、DVSとMDVSで大きく変わらなかった。
|