研究実績の概要 |
本年度は、初年度に作成した総座位時間および知的活動を評価する自記式質問票の妥当性・信頼性の確認およびこれらと認知機能の関連性を検討した。自記式質問票の妥当性確認は高齢者56名を対象とし、ウィルコクソンの順位和検定では自記式質問票の集計値と参照値の間に有意差を認めず(総座位時間:z = -0.63, p = 0.53; 知的座位活動時間: z = -0.82, p = 0.41)、知的座位活動時間においては参照値との有意な相関が認められた(スピアマンの相関係数ρ = 0.58, p <0.001)。Bland-Altman plotでは総座位時間において比例誤差が含まれていたが、知的座位活動時間では系統誤差はみられなかった。信頼性は成人勤労者26名を対象に確認し、再テスト法による級内相関係数は総座位時間で0.96(95%信頼区間0.90-0.98)、知的座位活動時間で0.99(0.98-0.995)を示した。認知機能評価は記憶力、注意機能、実行機能、情報処理速度を評価し、総座位時間と知的座位活動時間を説明変数、認知機能を従属変数とする重回帰分析を共変量で調整して行った。ベースライン評価から1年後の再評価が可能であった20名の解析では、知的座位活動時間と注意機能スコアの変化量が有意に関連していた(β = -0.51, p = 0.038, Adjusted R2 = 0.550)。また、高齢者97名を対象に磁気共鳴画像で評価した脳萎縮との関連性を検討したところ、知的座位活動時間は負の有意傾向を示し(β = -0.21, p = 0.058, Adjusted R2 = 0.162)、身体的フレイルに該当した33名については有意な負の関連を示した(β = -0.42, p = 0.024, Adjusted R2 = 0.369)。
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