研究課題
腸内細菌を介した免疫制御は、アレルギーなどの免疫疾患や糖尿病などの生活習慣病など様々な疾患に関わっていることが分かり、健康科学における新潮流となっている。我々は、腸管管腔だけではなくパイエル板などの腸管リンパ組織の内部にも細菌が共生していることを明らかにし「組織内共生」という新概念を提唱してきた。最終年度となる本年度は、アルカリゲネスの免疫学的なユニーク性に着目したアジュバント開発に向けた研究を中心に進めた。昨年度までに、アルカリゲネス由来LPSは、樹状細胞などの免疫系を適度に活性化するが、過剰な炎症は惹起しないという特徴を持っていることを報告している。そこで本年度は、アルカリゲネスLPSが経鼻ワクチンにおけるアジュバントとして、抗原特異的なIgA抗体産生ならびにT細胞応答などの免疫応答を増強できることを見出した。さらに、実用化の観点から、大阪大学の深瀬浩一教授らとの共同研究でアルカリゲネスLPSの構造を決定し、その活性中心であるリピドAの化学合成法を確立した。本合成法については試薬メーカーへ技術導出され、2021年8月より実験用アジュバントとして本リピドAの販売が開始されている。このように、本研究では、パイエル板組織内共生菌アルカリゲネスと樹状細胞の相互作用の解析から、アルカリゲネスが炎症を惹起せずに共生できるメカニズムを解明し、その学術知見をアジュバント開発を目指した応用研究へ発展させて、その有効性を示すとともに、実験用アジュバント試薬として実用化の第一歩に繋がった。現在、製薬メーカーとの共同研究により非臨床試験も開始されており、ワクチンアジュバントとして実用化に結び付くように本研究期間終了後も精力的に研究を進めていきたい。
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