本研究課題では,簡潔で高速な文字列処理アルゴリズム開発への新たなアプローチとして,Lyndon 文字列や Lyndon 文字列に基づいたデータ構造の未知の性質を明らかにし,それらを用いたアルゴリズム開発を目的としている.この目的達成のために,Lyndon 文字列に関連するトピックを中心に,様々な文字列処理アルゴリズムに関する問題に令和3年度も引き続き取り組んだ.当初の計画では令和2年度までの3年間を計画していたが,世界的な感染症拡大の影響のために1年間の事業延長を行った.したがって,本年度が最終年度である.最終年度中に一部の研究成果を,6報の論文を査読付き国際会議にて発表,5報の論文を査読付き国際学術雑誌にて公表している.
これらの研究成果は,文字列圧縮索引,文字列検索のための索引構造,文字列の特徴(極小ユニーク文字列,回文,極大繰り返し)抽出アルゴリズム,準動的な文字列処理アルゴリズム,組合せ的性質の解明などのトピックにおける成果であり,文字列情報学分野の多岐にわたる問題を解決しており,いずれも分野の発展に寄与する重要な成果である.本研究課題の核である Lyndon 文字列の数理的性質の解明や,Lyndon 文字列を利用した文字列処理に関してもいくつかの成果を挙げることに成功している.当初計画で想定していた成果が十分に得られているとは言い難いが,本計画に隣接するトピックに関して非常に多くの研究成果を挙げている.また,2021年度より開始した新たな研究課題において,本研究で得られた知見が十分に活きるものである確信している.
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