本研究課題では、「カエルや昆虫といった動物が長時間スケールで発声状態と休止状態を切り替える行動を記述する数理モデルを構築し、その数理モデルを拡張して無線センサネットワークの自律分散型制御に応用すること」を目的とした。この目的を達成するために以下の課題に取り組んだ: [課題1] 内部自由度に応じて力学系を切り替えるハイブリッド力学モデルの提案と解析 [課題2] 実際の生物から取得した実験データに基づく長時間スケールの行動特性分析 [課題3] 無線センサネットワークへの応用を志向した提案モデルの改良と解析 [課題1]については、疲労度、エネルギーなどの内部自由度に応じて、鳴く状態と鳴かない状態を切り替える数理モデルの構築を進めた。その結果、昨年度までの手法よりも、より長時間での消費エネルギーの低減を可能にする数理モデルが構築できた。また、カエルの行動データから位相振動子モデルを推定する手法を構築し、その有効性を明らかにした。[課題2]については複数種の動物の鳴き声の計測データを分析し、種に応じた発声行動特性の違いを明らかにした。また、野外での鳴き声計測用の音響計測システムの提案し、その有効性の検証を進めた。[課題3]については、対象とする無線センサネットワークの空間構造について様々なケースを想定した数値シミュレーションを進めた。その結果、小規模ないしは中規模なネットワークであれば、提案手法は比較的安定して動作することを示唆した。本研究課題で得られた成果は、査読付き学術論文3編、査読付き国際会議2編などとして公表した。
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