研究課題/領域番号 |
18K18008
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
廣瀬 善大 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (10637391)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 数理統計学 / 情報幾何学 / スパース推定 |
研究実績の概要 |
本研究課題で扱っているオッズ比は,オッズと呼ばれる量の比として定義される.そして,オッズとは,注目しているイベントが起こる確率と起こらない確率との比である.また,別の見方をすると,オッズ比は尤度比とも関連している.尤度比とは尤度と呼ばれる量の比であり,尤度とは観測データの尤もらしさを表現する関数である.本研究課題の2020年度の作業では,尤度を一般化した関数の一部について統計学的な文脈で研究を行った.尤度は統計学の様々なところで重要な役割を演じており,たとえばスパース推定や正則化と呼ばれる分野でも基本的なものである.本研究課題の2020年度の作業では,スパース推定等で用いられている尤度をその一般化によって得られる関数に置き換え,置き換えられた擬似的な尤度によるスパース推定法について調べた.特に,特定の問題においては,問題で使われている関数と尤度の一般化で使われている関数が相殺し,簡単に推定を実施できることが分かった.さらに,簡単な方法であっても推定結果が悪くないということを実験的に確認した.ただし,この方法を使うには,尤度にもとづく手法が想定していた設定からの乖離が大きくないことが必要であることも示唆された. また,オッズ比を含むパラメータの体系的な取り扱い方法に沿って,幾何学的な観点から,時系列データに対する代表的な時系列モデル(移動平均モデル)のパラメータ推定方法を提案した.特に,想定されるスパース構造が,従来よく使われていたモデルとは異なるようなものとなっていることが特徴のひとつである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で,主に成果の発信に遅れが生じている.本来は2020年度中に複数の国際会議にて研究成果を発表する予定であったが,それらの会議がすべて次年度以降に延期されたため,学会での発表については1年ほど遅れている状況である.ただし,国内の学会においては成果を予定通り発表できた.また,論文による公表については,一部の成果はすでに公表済みであり,さらに別の成果の投稿準備を進めており,おおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
本課題は1年間の延長をしており,延長された最終年度である2021年度の課題は,主にこれまでに得られた成果の国際会議での発信と,投稿準備を進めている内容を細部まで確認し論文として完成させることである.後者については,理論的側面の確認と数値実験の実施であり,2021年度中に少なくとも投稿は完了する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,参加を予定していた複数の国際会議が次年度以降に延期されたため,研究成果の発表のための費用を次年度に繰り越して使用することとした.2021年度が最終年度であるため,国際会議での発表のための費用と,研究成果の最終確認・とりまとめ等の費用としても使用する予定である.
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