研究実績の概要 |
本研究の目的は,スパースモデリングを駆使して,回帰モデルにおける線形要素と非線形要素の分解,およびグラフィカルモデルにおける差異検出を特に行うことである.当初は前者を中心に研究する予定であったが,在外研究先の研究者の都合に合わせて,後者を先に扱うことにした.
後者の研究では,複数のグラフィカルモデル間の,時間的・空間的な変化における差異を検出することが大きな目標である.これにより,変数間の関連性の変化を捉えることができる.グラフィカルモデル構築の際には,一般にデータに正規性を仮定する.しかし,訪問先の研究者との議論により,応用上のインパクトを考え,正規性の仮定から離れて離散系特にカウントデータを扱うことにした.
一般に,いくつかの条件付き分布から同時分布が規定できる.しかし条件付き分布をポアソン分布でモデリングすると,負の関連性しか扱うことができない.また,ポアソン分布は期待値と分散が同じであり,裾の大きなデータや,ある値に集中したデータに対応することができない.そこで当該年度では,まず条件付き分布を重み付きポアソン分布でモデリングし,それに対応する同時分布を導出した.これにより,正の関連性や過大・過小分散を取り扱うことが可能となった.また,構築したグラフィカルモデルは,先行研究(Inouye, et al, 2016, ICML)の一般化になっていることも確認できた.その後,スパースモデリングと相性の良い推定方法の構築に移った.Hyvarinen(2007, CSDA)で提案されたRatio Machingを拡張し,変数の次元が大きなデータでも効率的に計算できる推定方法を構築した.
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