最終年度に実施した研究の成果 : 高次元線形回帰モデルによる2グループ間の差異検出に関する研究を行なった. 2021年度に行なったスパース正則化に基づく方法によって,理論的に精度の良い推定量は構築できた.しかしながら,スパース推定量自体が持つバイアスのせいで,各パラメータに対する信頼区間や検定法の構築までは達成できていなかった.そこで今年度は,Javanmard and Montenari (2014)やZhang and Zhang (2014)などで提案されているde-biasのテクニックを用いて,スパース推定量からバイアスを除去し,各パラメータに対する漸近正規性を高次元漸近枠組みの下で導出した.また,ソウル大学のJohan Lim教授と,未観測交絡変数が存在する状況下における統計的推測について議論を行なった.完成までは至らなかったが,研究の方向性は共有できており,今後の国際研究の土台は作れた.具体的には,Wang et al.(2017)のモデルに基づき,Dai et al. (2022)の高次元多重検定法を修正しながら研究を進める予定である.
研究期間全体を通じて実施した研究の成果 : 本研究課題では,高次元パラメータを持つモデルについて,差異検出を行うための手法を構築し,かつ理論保証を与えた.高次元線形回帰モデルについては,差異に関するパラメータのスパースモデリングによる推定法を提案し,効率的推定アルゴリズムの導出,そして推定精度・最適性・統計的推測の理論を与えた.高次元2標本問題については,交絡変数が存在する状況下において,効率的スコア関数とcross-fittingに基づく検定法を与えた.具体的には,最大値型検定統計量による同時検定法および,Liu (2013)の方法を修正した多重検定法を与えた.
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