研究課題/領域番号 |
18K18011
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉田 拓真 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (80707141)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 極値統計学 / 分位点回帰 / スパースモデリング |
研究実績の概要 |
本年度は高次元分位点回帰における研究論文を発表した。分位点回帰は各分位点レベルを固定したもとでモデルを構成するので、分位間の従属性を考慮しない。したがって、分位点レベルは不連続な関数となり、レベルを超えた解釈を得ることが困難であった。 本研究の特色は複数の分位点におけるモデルを同時予測する方法を開発し、その結果、分位点レベルの連続化に成功した。これは、分位点レベルを変数とみてノンパラメトリック法を適用したことで達成された。提案した推定量の収束レートを導出し、数値実験を通じて手法の有効性を示した。このモデルは補完法やスパース法など様々な付加価値を付けることが可能である。そのひとつの成果としてスパースモデリングへの応用をまとめた。結果として単一でなく、複数の分位点レベルの予測に寄与する共変量を発見する手法を開発するに至った。 また、本年度は極値分位点回帰のノンパラメトリック法の確立にも着手した。具体的には共変量が多次元の場合の変数選択法を考案した。提案手法はSure independence screeningと呼ばれる手法を極値統計学に拡張したものとなっている。従来の理論と極値理論を融合させ、極値分位点に特化した収束レートの導出に成功した。本研究は高次元データに対する極値統計学の変数選択問題に取り組んだ初の成果である。本研究成果は論文にまとめられ、現在は国際ジャーナルに投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではノンパラメトリック回帰の極値分位点への応用を目標としている。2021年度に着手した分位点レベルに依存しない分位点回帰の結果は国際ジャーナルから出版された。また、本研究期間中に、ノンパラメトリック回帰に関連する論文は合計で4編国際ジャーナルが出版された。 特に、2021年度に出版された結果は、今後、極値分位点回帰への応用が期待され、現在着手している。極値分位点は通常のものとは異なり、外挿と呼ばれるテクニックを使用するが、その際に分位点レベルの連続化が効率よく機能することがわかっている。すなわち、通常の分位点回帰では分位点レベルが不連続となり、外挿の精度が悪くなる。その部分は自身の先行研究から克服できるため、より良い手法となって確立できると思われる。本研究はすでに見通しが立っており、次年度で成果を論文にまとめる算段がたっている。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は極値分位点回帰のノンパラメトリック法について、次元の呪いを回避するモデリングを考案する。想定しているのは、加法モデルと射影追跡モデルである。これらのモデルは平均回帰、分位点回帰では広く議論しているが極値分位点回帰への応用は発展途上と言える。これらのモデルは本研究課題で出版された成果の標準的な応用問題に位置付けられる。これらのモデリングを1つずつ確立することで、極値分位点問題の方法論拡充と分野の発展を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウィルス感染症の状況拡大でほとんどの国際会議、国内会議が遠隔開催となった。また予定していた研究打ち合わせも遠隔に切り替えた。そのため、旅費に計上した予算の分、当該助成金が生じた。2 2022年度は感染症拡大状況を見ながら、国内会議、国内研究者との打ち合わせを再開したい。研究費は主にそのための旅費として使用する予定である。 また、研究を円滑に進めるために、資料収集と数値実験データ整理のための学生アルバイトを雇用する。
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