研究課題
当該年度の研究実績として,1つ目に,浮動小数点数値計算データに対する予測によるデータ圧縮アルゴリズムについて,データ圧縮性能とFPGA実装時の回路面積との関係性についての評価を行った。評価結果から,データ圧縮性能を決定する主要因は予測演算の精度よりもむしろ符号化手法であることが確認された。異なるデータに対する予測精度にはばらつきが見られるものの,同一のデータセットに対しては,予測精度を変化させるよりも,符号化方式を変化させた場合の方が圧縮性能に大きな差が見られた。一方,回路面積を決定する主要因もまた符号化手法であるため,符号化手法の選択によって圧縮性能と回路面積をある程度操作できるという知見が得られた。2つ目は様々なデータ圧縮アルゴリズムに関する評価である。昨年度と同様に,国内外への出張が不可能であったため,先行研究やオープンソースのIP等の調査を基に,圧縮性能と回路面積の関係性について評価を行った。特に,ハードウェアIPの実装に関して,他機関への訪問が出来なかったことによる遅れが生じたが,1つ目の結果と共に圧縮性能と回路面積との関係性をまとめて,今後国際会議等への論文投稿を行う予定である。3つ目はFPGAを接続するネットワークシステムとして,スイッチを用いた間接網を追加で導入したことである。これまでの成果における通信データ圧縮は,FPGA同士が直接ケーブル接続された直接網でのみ行っていた。本年度は,より実用的なイーサネットプロトコルに基づく間接網用のシステムを構築し,パケット交換方式の通信を可能にした。これにより,複雑なデータ通信,例えば集団通信などによる輻輳の発生等の,実効帯域がより重要となる環境で,データ圧縮による帯域向上を評価することが出来る。構築した間接網システムについては国際会議への論文投稿中であり,今後の研究で間接網システムに対しても帯域圧縮の適用を行う。
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