研究課題/領域番号 |
18K18031
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
柴田 将拡 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (10806095)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 分散システム / モバイルエージェント / g-部分集合問題 / 均一配置問題 / 自律分散ルーティング |
研究実績の概要 |
本研究では、ネットワーク中を自律的に移動する複数体のモバイルエージェント(以下、エージェント)間の協調動作を、大規模で複雑なネットワーク下でも正しく実現させることを目指す。そのためには、(1)エージェントはネットワーク情報などの大域情報を持たない状態でも正しく動作することが望ましく、また(2)ネットワークやエージェントに動的な変化や故障が発生する状況下でも柔軟に動作することが必要となる。 2019年度は、(2)の中でも特にネットワークに動的な変化や故障が発生する状況に着目した。まず、1-interval connected ring と呼ばれる、各ラウンドで高々1辺が消失しているようなリングに対して、均一配置問題を解決するアルゴリズムの設計を行った。均一配置問題は、エージェントがネットワーク中に均等に配置するような自律的な移動を要求する問題である。リンクの消失が発生しない静的なリング上を対象とした先行研究では、エージェントがノード数の前提知識を持つ場合における手法とエージェント数の前提知識を持つ場合における手法の間に性能の差はなかったが、動的リング上ではノード数の前提知識を持つ場合における手法の方がエージェント数の前提知識を持つ場合における手法よりも高速かつ低負荷(少ないエージェント移動数)で問題を解決できることを示した。この結果は国内研究会で発表済みであり、また国際会議に投稿中である。 また、ネットワーク中に存在するノードの中から送信者と受信者を指定した場合に、故障により正常でない状態のノードが存在する状況からでも、送信者から受信者への経路を指定する自律分散アルゴリズムの設計も行った。この結果は、送信者と受信者の数が両方とも2体以下の場合と任意の数の場合それぞれに対して、構築できる経路の性質について解明し、国際会議2件に採録された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)大域情報を持たないエージェントを用いた協調動作に関しては、2018年度にg-部分集合問題と呼ばれる、エージェントがg体以上ずつのグループに分かれて集合するような自律的な移動を要求する問題に対してアルゴリズムの設計を行い、その結果が国際会議1件に採録され、またジャーナル1件にも採録が決定している。 また、(2)ネットワークに動的な変化や故障が発生する状況下におけるエージェントアルゴリズムに関しては、研究実績の概要で述べた通り、国内研究会1件で発表を行い、国際会議2件に採録されているため、順調に進行しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
(2)ネットワークやエージェントに動的な変化や故障が幅広く発生する状況下でのエージェントアルゴリズムの設計を行う。まず、これまでの均一配置問題は、静的・動的ネットワークのいずれの場合も、リングネットワークを対象としてきたため、今後は木や一般グラフに対しても均一配置問題を解決するアルゴリズムの設計を行う。 その後、動的な変化や故障に柔軟に対応するアルゴリズムの設計を行う。これまでは、ネットワークに動的な変化が生じる状況下での均一配置問題や、ノード故障が発生する状況下での自律分散ルーティング問題を考察してきたが、今後は動的な変化と故障が同時に発生する状況下でのg-部分集合問題・均一配置問題・自律分散ルーティング問題を考察していく予定である。
|