研究計画書の通り、電力割当制御システムのボトムアップでの広域化と高機能化を研究対象とした。新型コロナウイルスの影響もあり、全ての評価実験等を実データで行うには至らなかったが、計画書に記載した通り可能な限り実環境にて実データを用いた評価を行った。下記に成果の一部を述べる。 まず、電力割当制御に応用可能と考えられる組合せ最適化問題を題材として、効率の良いスケジューリングのための最適化手法を提案した。並行して、電力消費の効率化における重要な要素である空調に着目し、室温制御と予測の手法を研究対象とした。室温の予測ができれば発電や電力消費のスケジューリングが可能になり、電力消費の効率化のために有用である。そこで実際の過去の室温データを活用し、室温変化パターンの組合せによって室温を予測するアルゴリズムを構築し、システムとしての実装と実環境での評価を行なった。当該システムは、小型コンピュータRaspberrry Piと温度センサーにより室温データを収集し、Microsoft Azure上に蓄積されたデータから室温予測モデルを構築する。次いで構築した予測モデルに基づき、天候の影響、換気の効果やエアコンによる環境の変動など、複数の条件設定で予測を行う。評価実験では予測値と実測値とのずれやその原因を評価した。 別の研究の方向性として、単一家庭レベルでもより広域的な複数家庭レベルでも、電力割当制御において特に重要な役割を担うバッテリーに着目した。バッテリーの充電状態の情報(State of Charge)は常に明示的に得られるわけではないため、信頼性をもってバッテリーを活用するためには充電状態の推定が有用となる。そこで、バッテリーの充電状態を電流波形を用いて推定する手法を検討し、実際のバッテリーを用いた評価を行なった。
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