研究課題/領域番号 |
18K18040
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久世 尚美 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20778071)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 情報ネットワーク / サイバーセキュリティ / 意思決定 / 強化学習 |
研究実績の概要 |
ネットワークのインフラ化により、Webサービスを提供するWebサーバを対象とした攻撃が急増している。その一方で、Webサービスの形態は多様化とともにWeb攻撃も多様化しており、申請者は、ネットワークの大規模化、多様化したWeb攻撃への対策のため、環境の変化や未知の状況に対しても柔軟に対応可能なヒトの脳の意思決定、学習の仕組みを応用することを検討している。 30年度において、申請者は、ヒトのグループでの集団的行動選択において見られるflexible leadershipの概念をネットワーク制御へと応用した。ヒトのグループにおいては、各々の意思決定者が、自身の有する情報に対する信頼度に基づいて、自身の役割を柔軟(flexible)に変更する。つまり、情報の信頼度の高い意思決定者(リーダー)が、情報の信頼度の低い意思決定者(フォロワー)を牽引し、グループ全体として、適切な行動選択が達成される。申請者は、WSNにおけるチャネル選択を題材として、flexible leadershipの概念を導入した手法を提案した。そして、シミュレーションを通して、情報が不確実な環境下であっても、適切なチャネルの選択が実現できることを示した。 また、申請者は、移動ロボットを対象とし、QoSに基づいた強化学習を利用した、無線通信を妨害するジャミングにロバストな移動制御手法を提案した。従来のジャミング攻撃対策においては、スペクトラム拡散技術が利用されてきたが、移動ロボットの台頭により、移動によるジャミング攻撃の回避が可能となった。この際、システムの実運用を行う上では、ユーザの要件を満たし、アプリケーションレベルでの性能を考慮することが重要となる。シミュレーションを通して、提案手法を用いることにより、ジャミングを回避しつつ最短経路を移動するよう移動ロボットの制御が行えることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、ヒトの脳の意思決定、学習の仕組みを応用したネットワーク、セキュリティ技術の確立に取り組み、順調に成果を挙げている。具体的には、不確実な情報に基づきながらも、局所的な協調を通して、全体として環境に適応的な行動を行う集団的な意思決定の仕組みをネットワーク技術へと応用した手法を提案し、ネットワークシミュレーションを通して有効性を示している。この研究成果は、論文誌へと投稿、掲載されている。また、移動ロボットを対象とした、強化学習を用いたアンチジャミング移動方式の提案を行い、シミュレーションを通して有効性を示した。この研究成果は、論文誌へと投稿予定であるとともに、国内の研究会においても口頭発表されており、研究成果の発信についても取り組んでいる。 今後、これまでの知見を踏まえ、ベイジアンネットワークに基づいたWeb攻撃検知手法の検討、評価に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は、過去に蓄積された情報に基づいて学習を行い、状況に応じた柔軟な意思決定を行う脳の仕組みに着目し、それをWeb攻撃検知手法へと応用することを検討している。近年の研究で、ヒトの脳が意思決定を行うプロセスはベイジアンネットワークの原理に基づくことが明らかになっており、ベイジアンネットワークに基づいたWeb攻撃検知手法を検討・提案し、攻撃の傾向の変化に対しての適応的な学習、および新規の攻撃の検知を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算の未使用額が少額であったため、次年度使用予算とした。次年度の物品費、あるいは旅費として利用予定である。
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