本研究は,BLE(Bluetooth Low Energy)やZigBee(IEEE 802.15.4)などの省電力無線通信技術を用いた屋内測位精度の向上を目的としている.BLEやZigBeeなどの省電力無線通信技術は帯域幅の狭い通信方式であり,屋内環境のような壁や天井などで複雑に反射した電波が入り交じるマルチパス環境においては通信周波数毎に受信特性が大きく変化する「周波数選択性フェージング」の影響を受ける.これを利用し,本研究では無線通信の複数のチャネルで測定した受信信号強度(RSS)を用いて測位精度を向上させる測位方式を提案している.これまでに,WiFiの広帯域信号を複数のZigBeeチャネルで検出してそのRSSから測位を行う方式,WiFi APの送信するビーコン信号と自律的に同期を取りながら同一のWiFi APから送信された信号のRSSを複数ZigBeeチャネルで測定する技術を開発した. 提案方式を適用する中で,環境によって最大誤差が大きくなる場合があるという問題があることが明らかになったことから,推定位置の範囲を絞り込みながら2段階に分けて測位を行う2段階チャネル区別BLE測位手法を提案し,その評価を行った.2段階チャネル区別BLE測位手法では,従来のようにチャネルを区別しないで測位を行う手法とチャネルを区別する測位を組み合わせることで最大誤差を小さくしながら平均の測位誤差を小さくすることを可能とする.また,提案方式の応用として,マルチチャネル通信ではなく,広帯域なWiFi信号において狭帯域なサブキャリアごとの電波のゆらぎをCSIから抽出することで屋外においてデバイスフリーで測位を行うことができることも確認した.
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