平成30年度は、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)やネットワーク仮想化技術(NFV)により、ネットワーク機器の設定を柔軟に変更しサービスを提供することが可能となるが、多数の機器を制御するコントローラの負荷分散のためには、複数のコントローラを分散配置させる必要がある。本研究では、複雑系科学の知見である、顕著性と呼ばれるリンクの特徴を表す指標に基づき、分散型SDNコントローラの配置を決定する手法を考案し、既存研究(施設配置問題に定式化)に比べて短い時間で配置を決定できること、コントローラ-スイッチ間の平均遅延を抑えられることを、グラフ生成モデル、および既存のISPネットワークトポロジーを用いた評価により確認し、国際会議などで発表を行った。 また、令和元年度は、上記の配置手法をコントローラ追加位置決定手法へ拡張し、適用先としてネットワーク仮想化技術(NFV)におけるネットワークスライス設計に応用できることを示した。ネットワーク仮想化により、特定のサービスを提供するための、論理的に独立したネットワーク(スライス)を構築できるようになるが、スライスを利用者数の変化に応じて適宜最適な形に再構成(拡大や縮小)し効率化を図るためには、スライスの設計は短い計算時間で行えること、およびスライスの再構成を考慮した設計を行うことが望まれる。そこで、分散コントローラ配置手法をもとに、ネットワークスライスを構成する仮想マシンをトポロジー内のどのノードに配置するかを決定する手法を考案し、サーバの応答遅延を抑えつつ、スライスの拡大・縮小かかるコスト(仮想マシンの移転回数)を抑えられることを確認し、国際会議にて発表を行った。 本研究計画では顕著性という複雑系科学の知見を利用しており、この指標が情報ネットワーク設計に限らず、最適化問題に依らない新たなアプローチによる施設配置問題の解き方へも応用が期待できる。
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