情報セキュリティの信頼性の根幹であるハードウェアセキュリティに関して、本課題ではハードウェアのうち電子回路への脅威であるハードウェアトロージャン(HT)問題を扱っている。HT問題は従来、集積回路(IC)の問題とされてきたが、プリント配線基板(PCB)の実装密度の上昇によるHT挿入時の発見困難さや、製造の外部委託による製造時のHT挿入など、現在のPCBの特徴がHT挿入リスクを作り出している。さらには、PCBは製造後でも機器を開封することで攻撃者がアクセスすることが可能であるため、出荷後の機器の輸送中や使用中にもHT挿入リスクが生じている。 このHT問題の中でも情報機器の出荷後に機器の回路に実装可能なプリント配線基板(PCB)レベルのHTについて、機器の真正性を維持する手法の検討を進めている。その真正性を保証する基盤技術を開発するために、①電磁波を用いた情報漏えいをもたらすHT(RFHT)の実現可能性の検証、②RFHTが機器に実装される事で生じる機器への影響の解析、③仕掛けられたRFHTの検出手法の開発を遂行した。 これらの研究開発は、まずRFHTによる情報漏えいが可能なアナログ及びディジタル信号の盗聴可能性について分析を行った。続いて実機を対象とした実験を行い、RFHTの実装手法とRFHTから再放射される電磁波からの情報復元手法を提案した。また、その過程で、電磁波照射による情報注入の可能性についても明らかとした。次に、RFHTを検出する観点から、RFHTが実機に実装されることによる影響について解析を行い、微少な静電容量および絶縁抵抗診断で検出可能とする実験結果を得た。この検出手法実装については、機器のPCB上に実装されているマイクロコントローラ(マイコン)を用いた簡易な手法で実現出来る手法を開発し、環境電磁工学分野の国際学会にて招待講演で発表を行った。
|