研究課題/領域番号 |
18K18054
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
照屋 唯紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (20636972)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 格子暗号 / 格子基底簡約 / パラメトリック推定 / 統計 |
研究実績の概要 |
格子の基底と自然数列の集合で表現される探索空間から格子ベクトルの集合を出力するサンプリングアルゴリズムは,高速な格子基底簡約法の構築に利用されており,その性能は,その計算にかかる時間の短かさと,どれだけ短かい格子ベクトルを生成できるかという二つの指標で評価できる.このアルゴリズムについて,その出力される集合に含まれている格子ベクトルのノルムの分布を推定する方法と,あるノルム以下の格子ベクトルがその出力される集合にいくつ含まれているかを推定する方法について研究を行った.その結果,randomness仮定の元で,確率分布に対する高次キュムラントを使用した漸近級数展開の一つであるGram-Charlier A型級数展開を利用したパラメトリックな推定方法を構築した.この推定方法は既存の方法よりも高速であり,実験を行った範囲ではあるが観測値に対して一定の精度が認められる.さらに,randomness仮定の元で真値への理論的な収束速度についても解析を行った.その結果,真値への収束について一定の保証を得る事ができた.構築した推定方法は,入力と出力の確率的な関係を表現する.これをより詳細に観察し解析する事で,格子基底簡約アルゴリズムの性能を向上させる方法の構築や計算量の解析に役立てる事が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目の計画であった高精度かつ高速な性能推定方法の構築については順調に進んでいるが,アルゴリズムのパラメータを動的に最適化する方法についての調査および研究については遅れている.よって,全体の進捗としてはやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
高精度かつ高速に性能を推定する方法の構築については順調に進んでいるため,これを応用したアルゴリズムのパラメータを動的に最適化する手法について研究を行う.しかしながら,1年目の研究により,仮に動的最適化方法を構築した際,その質を定量的に評価する方法に関する知見が,調査した限り知られていない事がわかった.推定方法はrandomness仮定という経験則に基づく仮定の上に構築されており,実際の観測に対して必ず誤差が生じる.この誤差を評価し,性能推定方法と動的最適化を何らかの方法で評価できなければ,その質の評価のみならず,修正も改善も困難になると考えられる.今後は,この観点からの課題についても取り組み,動的最適化方法の構築を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね計画通りに予算を執行したが,端数として次年度使用額が生じた.翌年度請求分と併せて適切に執行する予定である
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