研究課題
本年度は、本研究の目標である特命認証付き匿名ルーティングのあるべき安全性概念いついて研究を進め、以下の成果を得た。匿名通信においては、ネットワーク上の複数の参加者が動的に結託することが想定される。そうした結託を適切にモデル化することは、安全な匿名通信技術を設計するにあたって非常に重要である。本年度は、この点に関して検討を進め、同じくネットワーク上の複数の参加者が動的に結託することが想定される暗号要素技術である、追跡可能集約署名という暗号技術について以下の成果を得た。集約署名とは、複数の署名者による(一般には異なる文書に対する)デジタル署名をコンパクトな表現に圧縮でき、圧縮したまま、元となったデジタル署名全てについての検証を一括して行える暗号要素技術である。この技術の課題として、ここのデジタル署名を圧縮する際に単体のデジタル署名として検証に通過しない不正なデジタル署名が混入すると、圧縮後の表現の検証は失敗してしまい、かつ、どのデジタル署名が正当であってどのデジタル署名が不正であったかを確認できなくなってしまうというものがある。この課題を解決するのが追跡可能集約署名であり、この暗号要素技術は、圧縮後の表現からどの(圧縮前の)デジタル署名が不正であったかを確認することができるものである。この追跡可能集約署名においても、ここの署名者が動的に結託し、圧縮された表現の検証や不正署名の追跡を妨害してくることが想定される。この点に関して、匿名通信において検討を進めてきた参加者の動的な結託に関する知見を追跡可能集約署名へ応用し、署名者の動的な結託に耐えられる追跡可能集約署名を提案した。
2: おおむね順調に進展している
本年度までの研究は概ね順調に進行している。本年度得られた追跡可能集約署名に関する成果は、匿名認証付き匿名ルーティングの安全性概念を検討する際に有効に活用されると想定される。
次年度は、本年度に得た成果、およびこれまでの年度で得た成果を活用し、以下のようにして研究を進める計画である。まず、本年度の追跡可能集約署名に関する成果、特にその安全性概念についての知見を活用し、匿名認証付き匿名ルーティングについて、求められる機能要件、安全性要件を整理し、暗号要素技術として定式化する。次に、その機能要件、安全性要件を満たす方式を設計する。この段階においては、これまでの年度で得られたゼロ知識証明などについての成果を活用することが想定される。
新型コロナウイルスの感染拡大が終息せず、そのため、予定していた出張のほとんどが中止となったため。これらについては、遠隔開催にて代替されたため、研究の進捗については特に支障が生じていない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Applied Cryptography and Network Security Workshops - ACNS 2021 Satellite Workshops, AIBlock, AIHWS, AIoTS, CIMSS, Cloud S&P, SCI, SecMT, and SiMLA, Kamakura, Japan, June 21-24, 2021, Proceedings
巻: 12809 ページ: 378~396
10.1007/978-3-030-81645-2_22