研究課題
本年度は、本研究の目標である匿名認証付き匿名ルーティングの実現に向けて研究を進め、以下の成果を得た。属性ベース署名とは、システムの各ユーザが、システム管理者から各自の属性に応じた署名鍵の発行を受け、その署名鍵を用いて署名を生成できる暗号要素技術である。この時、署名データは、署名の生成に用いた署名鍵の属性は、ある公開の条件式を満たすもののうちのいずれかである、という形で検証でき、それ以上の属性に関する情報は一切漏洩しないということも保証される。従来の属性ベース署名方式で、公開の条件として論理回路の様な記述力の高い計算モデルを許容する方式は、署名データのサイズが公開の条件の記述長に応じて長くなるものか、そうでなければ、その様な大きなデータサイズを回避するために、Karp帰着と呼ばれる複雑で高コストな計算を用いるものしか存在していなかった。本研究では、署名データのサイズが公開の条件の記述長に依存せず、かつ、Karp帰着の様な高コストな計算を必要としない、初めての方式を提案した。そのための構成要素として、constraint SNARKと呼ばれる日対話ゼロ知識証明の新たな変種の概念と構成法を提案し、それを用いて上述の性質を持つ属性ベース署名方式を提案した。この成果は査読付き国際会議SCN 2022にて発表した。ここで得た新たな日対話ゼロ知識証明は、本研究の目標である匿名認証付き匿名ルーティングの効率的な構成に活用できると期待される。
2: おおむね順調に進展している
本年度まで研究はおおむね順調に進展している。これまで得られた暗号要素技術は、いずれも匿名認証付き匿名ルーティングの構成に活用されると期待される。
次年度は、本年度に得た成果、およびこれまでの年度で得た成果を活用し、以下の様に研究を進める計画である。まず、これまでに得た安全性定義に関する成果を活用し、匿名認証付き匿名ルーティングにおいて必要とされる機能要件および安全性要件を整理する。その後に、同じくこれまでに得られた暗号要素技術に関する成果を活用し、上記機能要件および安全性要件を満たす匿名認証付き匿名ルーティング方式の構成を行う。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、予定していた出張のほとんどが中止となったため。次年度使用額は、2023年度以降に実施する研究動向調査および新たに得られた成果の発表のための旅費に充てる計画である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Security and Cryptography for Networks, 13th International Conference, SCN 2022, Amalfi (SA), Italy, September 12-14, 2022, Proceedings
巻: 13409 ページ: 711~734
10.1007/978-3-031-14791-3_31