研究課題
本年度は、本研究の目標である匿名認証付き匿名ルーティングの実現に向けて研究を進め、成果をあげた。具体的には、匿名認証付き匿名ルーティングの重要な構成要素であるゼロ知識証明について研究を進め、ゼロ知識証明を応用した認証技術の一種である多重署名について以下の成果を得た。多重署名とは、ある文書に対して複数の署名者間で対話的に通信を行うことで、それら署名者がそれぞれその文書に対して署名を発行したことを検証できる、小さな署名データを生成できる暗号要素技術である。また、(計算量的安全な)暗号要素技術はある計算問題の計算量的な困難さに基づいて安全性が証明されることが通例であるが、このとき、計算問題の計算量的な困難さと、暗号要素技術への攻撃の計算量的な困難さにはギャップがある場合がある。このギャップが大きい場合、暗号要素技術の攻撃の困難さを十分に高く設定するためには、より困難さの高い計算問題を用いる必要がある。このようなより困難さの高い計算問題を用いた場合、暗号要素技術の効率性が低下してしまう。このような問題を避けるためには、暗号要素技術への攻撃の困難さと、計算問題の困難さとの間にギャップの少ない方式が望ましい。そのようなギャップの小さな方式は、タイトに安全な方式と呼ばれる。本年度は、多重署名について、判定Diffie-Hellman問題と呼ばれる問題に基づく、通信ラウンド数が2回に抑えらえる、タイトに安全な多重署名方式を提案した。本成果は、査読付き英文論文誌IEICC Trans. Fundamentalsへ採録が決定している。ここで得た新たなゼロ知識証明は、匿名認証付き匿名ルーティングのタイトに安全な方式の構成にも活用できると期待される。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
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10.1587/transfun.2023EAP1045