昨年度に引き続き,テンソル分解とそれに関連する計算手法について,高性能計算の視点に基づいて研究を実施した.主な内容は以下の通りである.
1)2020年度は,新型コロナウイルス感染症の影響により,オンラインセミナー等が活発に開催されたため,海外の著名な研究者の最先端の研究内容を聴講する機会に恵まれた.そこで,よりHPCに適したテンソル分解アルゴリズムを実現するために,オンラインのセミナーや国際会議等を含めて,より最近の様々なテンソル分解アルゴリズムの状況を調査した.年度末の段階では,具体的な成果発表までは至らなかったものの,今後の研究に有益となる知見を得ることができた.
2)テンソル分解の過程で必要となる,特殊(例:非常に縦長)な行列に関する高性能アルゴリズムの研究を継続して実施した.具体的には,非常に縦長で数値的にランク落ちしている行列に対する,高性能なRank revealing QRアルゴリズムの開発を目標として,これまでに研究を実施してきたコレスキーQR型のアルゴリズムを発展させる研究を行った.これまでに,アルゴリズムとして十分に機能する(従来法と同程度の精度の結果を得ることができる)ことや,最新の計算機環境上で既存アルゴリズムよりも高速であることが確認できている.
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