研究課題/領域番号 |
18K18061
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
廣田 悠輔 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (60709765)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高性能計算 / 疎行列 / 固有値問題 / 直接法 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,固有値問題に対する解法として,従来の密行列直接法,疎行列反復法に加えて,疎行列固有値問題に対する直接法を確立することを目標とした研究開発を行っている.この目標を実現するために,帯行列の相似変換アルゴリズムを応用した疎行列向け高性能三重対角化技術,三重対角化のための置換前処理技術,固有ベクトルの逆変換技術および高性能並列化技術などの開発を進めている. 2020年度は,主に置換前処理および,固有ベクトルの逆変換について研究を進めた.置換前処理による研究では,置換前処理による帯幅削減の効果が限定される行列について分析を行い,そのような置換前処理が機能しないいくつかの複数の例を明らかにした.また,置換前処理の効果を評価する帯幅以外の尺度についても理論的検討を行った.固有ベクトルの逆変換技術の研究では,疎行列三重対角化の逆変換アルゴリズムの計算量について理論的検討を行い,疎行列がある種の構造をもつ場合には逆変換の計算量を低く抑えられることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は (1) 置換前処理の研究および,(2) 逆変換のソフトウェア実装・性能評価を優先して進め,これらを完成させる予定であった.しかしながら,2020年度中にこれらの研究を完遂させられなかった.まず (1) では置換前処理を行うための適当な評価関数を構築することに時間を要し適当な実装の開発に至らなかった.それに加え,(2) では多段階の変換を要する疎行列三重対角化の複雑な逆変換の実装に時間を要し評価実験に至らなかった.このため,当初予定通りの進捗が得られず,現在までの進捗状況は「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度終了時点で,共有メモリ計算機向けソルバについては一定の進捗が得られているものの研究成果公開が遅れている.これに加え,分散並列マシン向けアルゴリズムについては開発そのものについて十分な進捗が得られていない.2021年度は課題最終年度であるため,当初予定されていた分散並列マシン向けアルゴリズムの開発を一旦停止して,共有メモリ計算機向けソフトウェア公開,研究成果公開(論文発表,ソフトウェア公開)に集中する.その後,共有メモリ計算機向けの研究成果公開が早期に完了した場合に限り,残り期間に分散メモリ向けの研究開発を行い,その成果を公表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は COVID-19 の影響で年度末に予定されていた出張が実施されなかったことにより旅費支出が減少する結果となった.2021年度は,成果公開による論文投稿料,ソフトウェア公開のための追加の計算機資源利用のために資金が使用される予定である.
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