本研究は、粘り強く健全性を維持するための構造物の耐津波設計に資するため、漂流物や波と構造との相互作用を考慮した並列連成解析システムの開発を目的としている。そのために本研究では、大規模並列連成解析システムの開発および高度化と、津波漂流物の数理モデル開発の二つに研究課題を分割している。 大規模並列解析システム開発に関しては、2018年度から2019年度にかけて、重み付きグラフ構造のエッジカットの最小化を行うライブラリ METIS を用いた幾何学的領域分割ライブラリを利用し、計算時間に比例する重みを適用することによって、動的負荷分散アルゴリズムの拡張および一般化を行った。また、ダムブレイク問題等を対象に実験結果との比較を行い、開発手法およびシステムの妥当性検証を実施した。開発システムを用いた数値計算における圧力の時刻歴が実験結果と基本的に良い一致を示すことと、空間解像度を高くすることで明確に精度が向上することを確認した。 津波漂流物のモデル開発に関しては、代表者が開発したポリゴン壁境界モデル (explicitly represented polygon 壁境界モデル) に基づく流体剛体連成モデルと、任意の四面体もしくは六面体で剛体もしくは弾性体を表現する ghost cell boundary モデルの開発を行った。これらのモデルでは、有限要素法等で用いられるメッシュやその表面の幾何情報を用いて連成解析が実現可能であり、上述の大規模並列解析システムと組み合わせることで並列解析への拡張が容易である。また、津波の解析に特化した粒子法の理論的拡張として、差分法で用いられる境界適合格子法を粒子法に拡張し、海底面境界に適合した座標変換を導入した、底面境界適合粒子法の開発を実施した。これにより、海底面における解析精度が向上し、計算効率も向上することが示された。
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