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2018 年度 実施状況報告書

線形反復ソルバーに対する平滑化技術の革新と最適化アルゴリズムへの応用

研究課題

研究課題/領域番号 18K18064
研究機関東京都市大学

研究代表者

相原 研輔  東京都市大学, 知識工学部, 講師 (70735498)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード大規模連立一次方程式 / クリロフ部分空間法 / 平滑化技術 / 丸め誤差解析 / グラスマン多様体 / ニュートン法 / 一般化シュティーフェル多様体 / レトラクション
研究実績の概要

2018年度は,大規模連立一次方程式に対する反復ソルバーの収束性を改善する「平滑化技術」について,計算機上で生じる丸め誤差の解析と,それに基づくアルゴリズムの改良を行った.平滑化技術は反復ベクトルの収束の振る舞いを滑らかにするための古典的な手法であるが,従来とは異なる計算スキームを適用することにより,ベクトルの更新過程や行列とベクトルの積において生じる丸め誤差の影響を抑制できることを理論的に示した.結果として,収束の振る舞いだけではなく,近似解の精度の向上といった付加価値のある新しい平滑化手法を開発した.研究成果の一部は,2018年5月に香港で開催された国際会議「SIAM Conference on Applied Linear Algebra」などで口頭発表を行うとともに,関連する内容を京都大学数理解析研究所講究録に掲載している.また,年度末には研究成果の詳細をまとめた論文が学術雑誌 BIT Numerical Mathematics に採択され,2019年度中に公開・出版される予定である.
また,以上と並行して,リーマン多様体上の最適化アルゴリズムの改良にも取り組んだ.2018年度は,グラスマン多様体上の最適化に有効なニュートン法を構築した.本手法では,アルゴリズム中に現れるニュートン方程式を線形反復ソルバーによって求解するという工夫により,従来よりも効率的な実装を可能としている.研究成果は,国内の学会等で口頭発表するとともに,日本応用数理学会論文誌に掲載されている.また,一般化シュティーフェル多様体上で近似解の更新に用いられるレトラクションという写像について,行列分解に基づく新しい効率的な計算手法を構築した.研究成果は,国内の学会等で口頭発表するとともに,学術雑誌 Computational Optimization and Applications に掲載されている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

線形反復ソルバーに対する平滑化技術について,詳細な丸め誤差の解析とそれに基づくアルゴリズムの改良を行うことができ,本研究課題における主たる目標の一つを達成したため.また,当初は初年度の予定に含まれていなかったリーマン多様体上の最適化アルゴリズムの研究について,ニュートン法やレトラクションに関する新しい計算手法を開発することができたため.

今後の研究の推進方策

2018年度の研究に続いて,線形反復ソルバーや平滑化技術に関する更なる改良や汎用性を高めるためのアルゴリズムの拡張に取り組む予定である.また,関連する悪条件な最小二乗問題に対する数値計算アルゴリズムについても,高速化と高精度化を目指して研究を進める.リーマン多様体上の最適化アルゴリズムについては,これまでに構築した手法の数値的安定性の解析を進めるとともに,平滑化技術との併用や統計手法などへの応用について検討を行う.

次年度使用額が生じた理由

2018年度は,当初の予定よりも旅費に掛かる費用がやや少なかったため,次年度使用額が生じたが,差額は10千円未満であり,概ね計画通りに支出している.
差額分は2019年度に請求した助成金と合わせて,今後,国内外の学会等で研究発表を行うための費用として使用する予定である.

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Variants of residual smoothing with a small residual gap2019

    • 著者名/発表者名
      Kensuke Aihara, Ryosuke Komeyama, Emiko Ishiwata
    • 雑誌名

      BIT Numerical Mathematics

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s10543-019-00751-w

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cholesky QR-based retraction on the generalized Stiefel manifold2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Sato, Kensuke Aihara
    • 雑誌名

      Computational Optimization and Applications

      巻: 72 ページ: 293--308

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s10589-018-0046-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] グラスマン多様体上の商構造を用いたニュートン法2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤 寛之,相原 研輔
    • 雑誌名

      日本応用数理学会論文誌

      巻: 28 ページ: 205--241

    • DOI

      https://doi.org/10.11540/jsiamt.28.4_205

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 短い漸化式を用いるKrylov部分空間法の偽収束改善について2018

    • 著者名/発表者名
      相原 研輔
    • 雑誌名

      京都大学数理解析研究所講究録

      巻: 2094 ページ: 112--121

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 積型Bi-CG法における包括的な安定化多項式の提案2019

    • 著者名/発表者名
      相原 研輔
    • 学会等名
      日本応用数理学会2019年研究部会連合発表会
  • [学会発表] リーマン多様体上の最適化におけるレトラクションの理論と応用2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤 寛之,相原 研輔
    • 学会等名
      日本応用数理学会2019年研究部会連合発表会
  • [学会発表] Bi-CGstab(ell)法とGPBi-CG法を融合した積型Bi-CG法について2018

    • 著者名/発表者名
      相原 研輔
    • 学会等名
      日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会第26回研究会
  • [学会発表] 短い漸化式を用いるクリロフ部分空間法に対する残差スムージング2018

    • 著者名/発表者名
      相原 研輔
    • 学会等名
      数値解析セミナー #108
  • [学会発表] 相互作用型の残差スムージングによる積型BiCG法の収束性改善2018

    • 著者名/発表者名
      相原 研輔
    • 学会等名
      日本応用数理学会2018年度年会
  • [学会発表] グラスマン多様体上の商構造に基づくニュートン方程式とその解法2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤 寛之,相原 研輔
    • 学会等名
      第47回数値解析シンポジウム
  • [学会発表] Smoothed variants of hybrid Bi-CG methods for solving large sparse linear systems2018

    • 著者名/発表者名
      Kensuke Aihara
    • 学会等名
      SIAM Conference on Applied Linear Algebra (SIAM-ALA18)
    • 国際学会
  • [備考] 相原研輔のホームページ

    • URL

      http://www.comm.tcu.ac.jp/aiharak-sc/index.html

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公開日: 2019-12-27  

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