オリーブ蝸牛束反射による内耳保護機能の個人差が,これまでに受けてきた音響暴露の特性の違いによって生じるという仮説のもとで,芸術大学で演奏を学ぶ学生を対象として,両者の関係を調べた.その結果,音響暴露レベルが高いヴァイオリン専攻の学生のオリーブ蝸牛束反射は,他楽器の専攻の学生に比べて強いことが分かった.さらに,非音楽を対象とした一連の実験から,オリーブ蝸牛束反射が注意や予期によって変動し,その変動量には個人差があることを明らかにした.オリーブ蝸牛束反射の内耳保護機能の個人差には,音響暴露の履歴だけではなく,認知的処理に基づく制御の良し悪しも影響することを示唆している.
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