研究課題/領域番号 |
18K18067
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
横矢 直人 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, ユニットリーダー (40710728)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不完全データ復元 / マルチモーダルデータ融合 |
研究実績の概要 |
本年度は,データの不完全性と教示データの不足,に対処するための地球観測データ解析技術の開発に取り組み,以下3つの項目を実現した. 1)マルチセンサ時系列画像を用いた不完全データ復元:合成開口レーダ(SAR)と光学センサの多時期データを入力とする敵対的生成ネットワークにより,雲の影響で観測できない光学画像を復元する手法を開発した.従来の1時期のみを扱う方法では,現実的な光学画像の復元は困難であったが,過去に撮影されたSAR・光学画像の対応を考慮することで高精度な画像復元が可能であることを明らかにした.雲に起因する部分的な欠損については,時系列光学画像に含まれる雲の検出と除去の問題を同時に解く低ランクテンソル解析手法を考案した.検出と除去を別々に扱うこれまでの方法と異なり,2つの課題をあわせて解くことで,高い復元精度を実現した. 2)土地被覆分類用教示サンプルの自動選択:畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により,地上撮影画像から土地被覆分類用の教示サンプルを生成する方法について検討した.CNNの出力を基に,土地被覆図のための参照用地上データセットに含まれるラベルノイズを段階的に低減し,地上撮影画像分類モデルの高精度化を実現した.Sentinel-2衛星画像を用いた土地被覆分類図作成において,本手法により生成した教示サンプルを用いることで,目視で作成した教示サンプルを用いる場合に匹敵する分類精度を達成した. 3)センサ特性の差異に頑健な土地被覆分類:観測域は限定的な高波長分解能画像を表現学習に活用することで,観測域は広大な低波長分解能画像や偏波合成開口レーダ (PolSAR)を用いて土地被覆分類をする際に,より有効な特徴量を学習する半教師ありマルチストリーム深層学習手法を開発した.本手法により,異なるセンサで得られる画像から,一貫して精度の高い土地被覆分類を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初設定した本年度の研究項目である,1)マルチセンサ時系列画像を用いた不完全データ復元,2)土地被覆分類用教示サンプルの自動選択,だけでなく,3)センサ特性の差異に頑健な土地被覆分類,についても実施することができたため,当初の計画以上に進展したといえる.
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今後の研究の推進方策 |
以下3つの課題に取り組む. 1)センサ特性の差異に頑健な土地被覆変化検出:土地被覆変化検出には,変化の前後で同一のセンサを用いることが一般的である.マルチセンサ時系列画像を用いた不完全データ復元と,センサ特性の差異に頑健な土地被覆分類の成果を統合することで,変化の前後で異なるセンサデータを扱うことができる土地被覆変化検出手法を考案する. 2)スペクトルライブラリを用いた教示サンプルの自動選択と物質・含有率分解:直接光と散乱光を定式化した物質・含有率モデルを構築し,大気条件や影の影響に頑健な教示サンプルの自動選択と物質・含有率分解の手法を考案する. 3)迅速な災害状況把握への応用:当初よりも進展しているため,変化検出技術の開発だけでなく,より具体的な実問題に対して,本研究で開発する技術の有用性を検証する.データの不完全性と教示データの不足は,災害状況把握にいて最重要課題である.マルチセンサを用いた地震・津波による建物の被害分類を試み,被災地域や観測センサが異なる場合の汎化性能を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初計画では,平成30年度にネットワーク対応型の大容量ハードディスクの購入を予定していたが,所属機関を変更し,大容量ストレージを含む計算機システムの利用が可能となった.また,当初の計画以上に研究は進展しており,論文掲載費や研究発表のための旅費が令和元年には増大することが見込まれる.そこで,平成30年度の大容量ハードディスクの購入を取りやめ,令和元年の論文掲載費や旅費に使用するよう予算計画を変更した. (使用計画) 次年度使用額は,論文掲載費と研究発表のための旅費に使用することで,研究成果を効果的に社会に発信できる.現所属機関において大容量ストレージを含む計算機システムを使用可能なため,当初の計画に何ら支障はない.
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