研究期間を通して、本研究の目的である「運動や変形を伴う物体を対象としたマーカーレス・モデルレスのプロジェクションマッピングを可能とするシステム」を構築し、質感表現の拡張を実現した。 研究実施計画においては、不可視の波長帯を利用した高速形状計測、計測形状をもとにした投影映像の高速生成、そして、生成した映像の高速投影を課題として挙げていた。高速形状計測については、複数の不可視の波長帯を利用した特殊光学系を設計し、高速法線計測システムを構築することで解決した。計測形状をもとにした映像の生成については、計測した法線情報から得られる幾何的な拘束条件を利用し、マーカーレス・モデルレスの物体にも適用可能な新しい高速映像生成手法を開発することで解決した。また、投影については、システム自体の高速性を活用することに加えて、システムの光学的配置を工夫することで計測から映像投影までの遅延を抑え、高速投影を実現した。 本研究によって運動や変形を伴うマーカーレス・モデルレスの動的物体に対しても、ずれのない投影が実現され、これまで扱えなかった幅広い形態の物体を対象として扱うことが可能となった。また、疑似的な質感の高品質かつ動的な提示を可能とするシステムにより、高いリアリティをもつものの現実には存在しない質感を作り出し、質感を拡張することができた。 最終年度には、動的環境下において働く人間の質感認識能力について研究を進め、光学的特性の拡張に限らないダイナミックプロジェクションマッピングの活用と、研究成果のアウトリーチ活動に努めた。
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