研究課題/領域番号 |
18K18089
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
末石 智大 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任助教 (80807842)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高速ビジョン / マーカー / ジェスチャー認識 / 三次元トラッキング / 姿勢推定 / 再帰性反射 / 高速画像処理 |
研究実績の概要 |
本研究は,広範囲の移動を伴う人間の手指の姿勢情報を高速に画像ベースで取得するための,装着型マーカーを実現することを目的としている.即時投影やロボット協調動作など,ミリ秒オーダの即時応答性の必要な人間の作業支援に役立つことを期待したものである.2年目である本年度は,昨年度の基礎検討の結果を踏まえ指輪及びネイルマーカーの検討を進めた. 指輪・腕輪型マーカーについては,2つの傾斜から成るリング立体形状,そして画像計測のS/N比向上に役立つ同軸照明・再帰性反射材の特性を考慮した傾斜角を導出し,3Dプリントを利用した試作を実現した.1msでの高速画像処理を意図した再帰性反射材のドット数,およびドットの法線方向も考慮した画像認識を実装し,腕輪形状において十分な精度の姿勢推定の実現可能性を確認した.一方で,2つの傾斜に起因する突起が大きく,装着性の面でやや難があることも確認できた. ネイルマーカーについては,拘束性の低い微小剛体曲面としての形状設計を検討し,3Dプリントではなくネイルプリントによるテクスチャ貼り付けを用い,その後3Dスキャンを用いて3次元マーカーとして機能させる手順を導出した.これは3Dデータを作成してから物体である3Dプリントを作成するものとは逆の手順となる.非平面性を有するネイル形状が,平面マーカーと比較して回転推定精度において大きな向上を見せることが確認できた. 2種類のマーカーの基礎検討を踏まえ,リング形状および爪形状(微小剛体曲面)という,装着性の高さを意図したマーカーの実装方法及び実際の特徴についての整理が進んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画である腕輪・指輪・付け爪に依る装着型マーカーについて,リング・ネイル形状のシミュレーション及び実物での実装ノウハウが整理されたことから十分な進展がある.一方で姿勢推定のための特徴量をドットと想定するアプローチに関して,主に解像度や画像認識の点で限界が近い可能性があり,その対応として別の特徴量の導入も検討を進めている.この別の特徴量の導入を実施する場合でも,これまでに整理したシミュレーション・実物での実装ノウハウが生かせることが期待される.以上からこれらを総合的に踏まえると,おおむね順調に進展している状況であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
リング型・ネイル型マーカー両面での設計を高度化する予定である.特にドットに限定しない特徴量の導入を予定する.特徴量変更も含む設計高度化によって,高速姿勢認識・ID識別等の特徴を有する各マーカーモジュールの洗練に努める.並行して各マーカーモジュールの連携による手全体の状態計測手法も模索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に購入した三次元スキャナが十分な性能を有しており,安価なネイルプリントと組み合わせることで試作検証が低コストで実施出来たことが,次年度使用額が生じた理由として大きい.次年度は3Dプリントやネイルプリントを利用した検討用試作マーカーの増大,検証評価用の機器,そして対外発表に充てる予定である.
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