本研究では,広範囲に移動する人間の手指の姿勢情報を高速に取得し即時情報呈示に活かすための装着型マーカーの実現を目的としている.最終年度では,前年度に理論検討・設計を進めていた新しい指輪型マーカーの実現・実機評価を行った.複数の立体的楕円を組み合わせた楕円群指輪マーカーを3Dプリンタにより造形し,2ミリ秒以下の特徴抽出・最適化処理を含む新たに開発した高速画像処理によって姿勢推定を行い,即時応答可能な高速プロジェクタと連携して手のひらへのダイナミックプロジェクションマッピングを実現した.本成果は国際学会ならびに国内学会で発表し,特に国内学会では優秀講演賞を授与された.また,本指輪マーカーに再帰性反射塗装を施すことで,遠方への適応可能性も確認できた. 本研究で着目・追究した点は,装着型マーカーの4特徴(装着性・高速性・遮蔽性・連携性)およびミリ秒オーダの低遅延フィードバック応用システムである.研究期間全体を通じて腕輪・付け爪方式やドットマーカー方式も検討したが,当初の計画に無かった楕円群指輪マーカーを新規開発することに結果的に成功した.本指輪マーカーは,指輪形状による高い装着性,パラメトリックな曲線表現である楕円による姿勢推定の高速性,部分遮蔽にも対応した特徴点活用を行う画像処理による遮蔽頑健性,そしてドットマーカーと異なり単一マーカーだけで回転並進6自由度を推定可能な連携発展性を体現したものである.また,ダイナミックプロジェクションマッピングを通して,即時情報呈示への活用事例も実証した. 本研究で開発した装着型マーカーは,人間の手指の姿勢を高速に捉え,プロジェクタやロボットと協調して,ユーザーに即時に情報をフィードバック可能な技術である.高度な人間機械協調システムへ繋がる発展性を秘め,今後も様々な応用システム開発においても活用予定である.
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