研究課題/領域番号 |
18K18093
|
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
玉田 靖明 北九州市立大学, 国際環境工学部, 講師 (90803875)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 立体視力 / 個人差 / スマートフォン / リモート心理物理実験 |
研究実績の概要 |
人間の立体視力には個人差があるがその原因は明らかでない.年齢,通常の視力,屈折力だけでなく,生活様式など,さまざまな要因が複合的に寄与していると考えられる.ここでは,主として,スマートフォンへの依存度,他覚検眼器によって得られる屈折力,調節応答,調節微動,そして,立体視力の関係に着目する. 2019年度は,立体視力測定システムの改良,スマートフォン依存度データの回収方法の選定を行った. これまでに,立体視力測定の視標として,ランダムドットパターンを用いることを検討していた.また,単調な試行で被験者を飽きさせないために,ランダムドットを8×8マスのセルに分割して,各セルを両眼網膜像差によって段階的に浮き出させ順番になぞらせるというゲーム性を導入した測定プログラムを開発した.しかし,従来の測定機種として想定していたiPad mini 4では,描画性能やタッチパネルの反応などの点で,プログラムが軽快に動作しないという問題点が浮上した.そこで,測定機種としてiPad ProとApple Pencilを導入した.同機種であれば,Sidecarという機能を利用してMacと画面共有することも可能である.この機能を利用して,Matlab+Psychtoolboxで作成した既存の実験プログラムをタッチペンで直感的に操作できるようになった.測定機材の変更に伴うプログラムの改良は特に問題なく進んでいる. これまでに,スマートフォン依存度を測る指標として,iOSアプリケーション「スクリーンタイム」およびAndroidアプリケーション「Digital Wellbeing」を利用することを決定していたが,そのデータの収集方法について検討を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べたように,実験に使用する機材の変更はあったものの,視覚実験の整備とスマートフォンへの依存度のデータ回収の仕組みが確立され,これから実験を行うという段階であった.しかし,現在は,コロナ渦により,実験実施の目処が立っていない状況である.
|
今後の研究の推進方策 |
他覚検眼器による屈折力,調節応答,調節微動の測定は,対面での機会が必要である.また,立体視の実験では赤青メガネを必要とするため,オンラインの実験システムを構築しても実験を行うことができない.コロナウィルスの流行が収まり,対面での実験が可能になった際に,集中的に実験を行うということも考えられるが,状況が好転しないということも十分に考えられる.後者の場合には,立体視力測定と屈折力などの測定は後回しとし,運動視のオンライン実験とスマートフォン依存データの回収を先行して行うことを検討している.すでに,ランダムドットを用いたコヒーレンス運動の運動方向弁別閾を測るプログラムを開発し準備を進めている.30名の弁別閾のデータをオンライン実験により得ているが,遠隔環境で被験者自身にプログラムを操作させたときに,観察距離などが問題となってくる.後に対面でも同じ実験を行い,オンラインと対面でどれくらいの差が出るのかということも併せて評価しなければならない.また,30名中1名は,コヒーレンス運動を観察している時に集合体恐怖症のような感覚を覚え,弁別閾が測定できないということがあった.これは,一般的に用いられている視覚刺激が,必ずしも全ての人に見やすいものではないという示唆なのかもしれない. コロナ渦により困難な状況に直面しているものの,試行錯誤する過程で思いもよらなかった問題と出会えることもある.当初計画していた研究のゴールとは大分かけ離れてしまうかもしれないが,割り切ってできることからやって行く.
|