本研究課題では,正確性が求められる多言語対話環境において,話者の意図を適切に伝達可能な多言語間対話支援手法の実現を目的としている.実現のために,用例対訳,および,ノンバーバル情報を活用したメディア複合型対話様式を用いている. 本年度(令和3年度)は,国独自の伝統的なものの伝達支援の研究についてを中心に実施した.この研究では,医療分野以外に存在する文化の違いの伝達を目的としており,対象を日本独自の食べ物である和菓子としている.和菓子は訪日外国人に人気がある.しかし,日本独自の食べ物であるため,その味や食感を適切に伝達することが難しいという課題が存在していた.本年度は,前年度までの検討内容をもとにして,レシピサイトから抽出した食感語やWikipediaの説明文を活用した和菓子の味覚可視化手法の構築および実装を行った. 実験の結果,食感語を用いて作成されたワードクラウドなどを活用することで,和菓子を食べる前後に存在していた味や食感の齟齬の減らし,和菓子の味の適切な伝達の可能性を示した.なお,実験では日本人を対象に実施したため,システム上の言語は日本語で実装している.本研究成果を多言語環境に適用する際には多言語翻訳が必要となるが,一般的な機械翻訳機による翻訳では誤訳による情報伝達誤りが生じる可能性も示唆された.なお,本問題については,研究代表者が過去に実施してきた用例対訳に関する研究成果を適用することで,本研究成果を多言語環境へ適用できると考えられる.
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