本研究では,駐車車両付近のすれ違い行動をPWARXモデルと呼ばれるハイブリッドダイナミカルシステムを用いて解析を行った. 対象としたすれ違い行動では,相手に道を譲る,あるいは先に道を進むという二種類の行動が考えられる.また,その際には相手の行動を考慮しする必要があり,インタラクティブなタスクとなっている.そこで,この離散的な判断と連続的な運転行動を同時に表現する手法として,PWARXモデルを用いて運転行動における判断特性の解析をした.このモデルでは,入力として相手の行動(位置,速度など)を追加することにより,相手からの影響を表現することができる. このすれ違い運転行動モデルを獲得するために,マルチプレイヤー型ドライビングシミュレータを開発した.このシミュレータでは,二台の運転行動を同時に再現できるため,インタラクティブな運転を繰り返し試験することが可能となる.このシミュレータを用いて複数名の20歳代の男性に対して運転行動を計測した. その結果,駐車車両側の車両(非優先車両)と逆側の車両(優先車両)ではモデルが大きく異なることが確認された.非優先車両では,相手の行動を考慮する要素が大きくなっており,インタラクティブな運転であることが確認された.一方で,優先車両では,相手を考慮する要素が小さくなっており,交通優先度的に自車を優先する行動となっていたことを確認できた. また,上記の解析とは別にモデルの性能評価を行った.このモデルは,自車と相手車両の挙動を入力として走行速度を出力するモデルとなっているため,この予測速度と観測データの誤差を評価したところ,1.5割程度の誤差で予測できることが確認できた.そのため,運転行動の解析だけではなく,自動運転のアプリケーションにも適用できると考えられる.
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