本研究は時間的に変化する未知の相互作用のパターンを,複数の時系列データセットから自動検出し,かつ相互作用の定量的評価を可能とする手法の開発を目指すものである.関連既存研究の多くでは時系列の分節化を行うことで,パターンの検出を行っているが,データに均一性を仮定したり,不均一性を扱えたとしても分節化にとどまったり,あるいはブラックボックス的なモデルで解釈が困難であったり,と様々な問題があった.本研究では,ベータ過程自己回帰隠れマルコフモデルなどで基礎的なパターンを抽出し,その基礎的なパターンの組み合わせからなるより複雑なパターンをベイズ階層言語モデルなどで捉えるという2ステップのアプローチを用いる.それによって,既存手法における仮定条件の緩和や問題点の解消を行う.また上述の手法をさらに拡張することで相互作用パターンの定量的評価技術の開発に繋げたいと考えている. 前年度はベータ過程自己回帰隠れマルコフモデルにベイズ階層言語モデルを併用した場合にヒトのカテゴリー分割と一致度は高まるのか、という検証に取り組んでいたが,今年度はその検証を継続するところから開始した.再現性のあるパターンの単位に対してヒトは特定のカテゴリーと見なすであろうと考えられるが,その仮定が妥当であれば,提案手法による分節化との合致はある程度期待できるものだと期待していた.本研究では,(1) 人工データ,(2) ヒトの解釈が一意に与えられるシンプルな相互作用パターンのデータ,(3) 複雑な相互作用パターンを示すデータ,と段階的に提案手法の有用性を検証してきた.その検証の結果として,本手法の有効性が確認されるとともに,手法のさらなる拡張についても実装することができたため,それらの内容を学術誌論文へ投稿した.
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