2021年度は昨年に引き続き,機械学習結果を利用したパラメータ推定法および空間構造を考慮した確率モデルの開発の2点に関して研究を行った.本研究計画で最終的に提案しようとする確率モデルは,処理対象の画像が持つ情報に比べて,推定すべきパラメータの数が多くなることが想定される.そのため,本研究計画では機械学習の結果を利用することで効果的にパラメータを推定する方法の開発に取り組んでいる.2021年度は本研究計画で提案する機械学習結果を利用したパラメータ推定法は,確率モデルの実際のパラメータが機械学習に使用したデータの生成パラメータから離れていた場合ではどうなるかという,従来の機械学習だけの方法ではパラメータ推定を失敗してしまうような状況下でパラメータ推定が正しく行われるかの検証をおこなった.その結果,数値実験を行った範囲内での検証ではあるが,本研究計画で提案したパラメータ推定法は,従来の機械学習が上手く機能しないと思われる場合でも比較的良好なパラメータ推定が可能であることが確認できた.また,これまでに実施してきた確率モデルは2値画像という単純な画像処理を対象とした確率モデルを想定してきたが,より一般的な画像処理の確率モデルへの拡張にも取り組んでいる.空間構造を考慮した確率モデルの開発については,昨年度は前述のパラメータ推定法と構造推定の方法を組み合わせる方針で進めていたが,従来の構造推定の方法が通常の画像処理で考えるようなノイズの存在をそこまで考慮した形で定式化していなかったため,前述のパラメータ推定法との相性を考えて,まずは画像処理で考えるようなノイズの存在を仮定した上で良好な構造推定を行う確率的な方法を開発するという方針に方針転換を行った.こちらも2値画像という単純な画像処理を想定した形ではあるが,ノイズの存在を仮定した形で構造推定を行う確率モデルの定式化を行った.
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