研究実績の概要 |
凸最適化に基づく信号処理手法は,信号処理に現れる諸問題を凸最適化問題として定式化し,その解法を信号処理アルゴリズムとして活用する手法である.この手法は,推定対象の「観測情報」と「先験情報」を同時に活用する柔軟な枠組みとして,スパース信号処理やデータサイエンスなどの発展において中心的な役割を果たしている.この手法のさらなる発展には「新たな最適化問題」に対するアルゴリズムを確立することが最重要課題となっている.本研究は,この課題に現れる種々の困難を最適化理論と実代数幾何のアプローチを用いて解決し,信号処理工学の学術的発展に資することを目的としている. 本研究では,いくつかの非凸最適化問題に対する解法を検討してきた.具体的には,(i)区分的連続関数の推定問題に対するアルゴリズムの提案,(ii)スパース適応フィルタリングに現れる「スパース性を制御するパラメータの自動設計問題」において,自動設計問題を区分的二次関数の最小化問題に帰着する手法の提案,(iii)ベクトルのスパース性や行列の低ランク性などの促進に有効な非凸正則化,および「非凸正則化付き最小二乗推定法」の提案などである. 最終年度は,運動動作における関節位置の時系列データの分類問題への応用に取り組んだ.2つ時系列が異なっている度合いを評価する指標として広く用いられているDynamic Time Warping(DTW)を活用し,時系列分類に役立つ時系列データの特徴選択問題を定式化した.さらに,それが区分的二次関数となっていることを確認するとともに,近接勾配法に着想を受けた発見的手法を構成し,その性能を数値的に確認した. 本研究の成果が信号処理工学の発展に寄与する一助となることを期待するとともに,今後はこれらの成果をさらに発展させ,広く共有していきたいと考えている.
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