研究課題/領域番号 |
18K18124
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
信川 創 千葉工業大学, 情報科学部, 准教授 (70724558)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 加齢 / 脳波 / 複雑性解析 / 機能的結合 / ゆらぎ / スパイキングニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
当初の研究計画としては,次の研究項目の通りである.①加齢/認知症患者の横断的な脳波データを対象に,各部位間のDynamical Phase Synchornization (DPS)の複雑性を解析することで,加齢/認知症におけるネットワークダイナミクスの変質を明らかにする.②認知症へ移行する縦断的な脳波データに対しても解析を行い,その複雑性の時系列的な変質を捉える.③脳活動シミュレータによるパラメータ探索から,複雑性の特徴に対応した神経ネットワーク構造を推定し,複雑性の特徴の変化から神経ネットワーク変質の進行と認知症の発症リスクを予測する. これまでの研究成果として,研究項目①については,DPSの解析により,加齢による前頭野を中心とした神経ネットワーク変質を検出することに成功した.認知症のDPS解析の準備段階の解析として行った脳波時系列パターンの複雑性解析では,周波数帯域毎に特徴的な認知症による複雑性変質の検出に成功している.研究項目②については,準備段階の解析として実施した,脳波の複雑性の解析において,alpha帯域の脳波の複雑性と認知機能が高い相関を示すことを確認している.研究項目③については,大脳皮質などの個別の神経回路のモジュールを既に実装しており,自発的発火活動などの特性を高い精度で再現できることを確認している(Nobukawa et al., Sci. Rep., 2019(1,2)). このように,上記の通り研究の完了に向けた進捗は順調であり,また本研究での研究成果は複数の論文誌で発表され,その成果は一定の評価を受けていると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果として,研究項目①については,DPSの解析により,加齢による前頭野を中心とした神経ネットワーク変質を検出することに成功した.認知症におけるDPSの解析においては,認知症の脳波において現れる主成分のパワーの低周波数成分へのシフト(徐波化)への対応を現在検討している.認知症のDPS解析の準備段階の解析として行った脳波時系列パターンの複雑性解析では,周波数帯域毎に特徴的な認知症による複雑性変質の検出に成功している.よって,時系列データのスケール調整などの手法で前述の問題を克服できれば,認知症の神経ネットワーク変質を明らかにできると考えている.研究項目②については,準備段階の解析として実施した,脳波の複雑性の解析において,alpha帯域の脳波の複雑性と認知機能が高い相関を示すことを確認している.DPSについては,前述の徐波化への問題が解決できしだい実施予定である.DPSを適用した場合においても,認知機能に関連した神経ネットワークダイナミクスの変質が検出できると考えている.研究項目③については,大脳皮質などの個別の神経回路のモジュールを既に実装しており,自発的発火活動などの特性を高い精度で再現できることを確認している(Nobukawa et al., Sci. Rep., 2019(1,2)).よって今後,これらのモジュールの結合により,加齢・認知症におけるDPSの複雑性プロフィールを再現するパラメータ探索を実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
残りの研究期間で実施する研究項目としては,認知症の脳波において現れる主成分のパワーの低周波数成分へのシフト(徐波化)への対応と脳活動シミュレータの大規模化への対応である. 具体的な方策として,前者については,脳波の時系列データのスケール調整などの手法により,徐波化の影響を補正し,DPSの適用を行うことを計画している.また,後者については,既に開発済みである大脳皮質などの個別の神経回路のモジュールを,結合させ脳活動シミュレータを完成させる予定である. 以上のことから,当該研究はほぼ当初の計画通り遂行できており,残りの研究期間で,脳波の徐波化と脳活動シミュレータの大規模化にさえ対応できれば,問題なく研究を完了できる予定である.
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