本研究ではデータのテンポラル・ネットワーク表現とグラフ間距離を組みあわせたデータ解析手法を開発することを目標としている.昨年度までに,解析対象とした人と人の対面データ(コンタクト・ネットワーク)に対してその予測可能性等を定量的に評価する手法の提案およびその有効性の検証を行った.また,これらの手法を用いて人と人の対面データにどのような性質があるのかを調査した.2021年度は主に次の内容に関して追加検討を行った: (1)人と人の対面データと情報拡散の数理モデルを組み合わせることで,コンタクト・ネットワーク上での情報拡散とネットワークの構造的特徴の間の関係を調査した.特にネットワークの中心性と情報拡散に重要な関わりがあるという知見を得た. (2)ネットワークの構造的特徴の時間変化に基づいて,コンタクト・ネットワークや電子文書の送受信ネットワークの予測がどの程度可能かを調査した.時間的な情報を考慮した辺の出現頻度に加え,サブグラフ中心性を用いることで予測精度が向上する可能性があることを明らかにした.また,グラフ間距離とネットワークの中心性の関係について検討を行った. 以上の成果の一部を査読付き国際誌論文および査読付き国際会議論文,国内研究会において発表した.
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