研究課題/領域番号 |
18K18126
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
麻原 寛之 岡山理科大学, 工学部, 講師 (50709615)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱電池 / DC-DCコンバータ / 分岐現象 / 安定性解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、排熱発電システムに用いられる電力変換回路の定性的性質を解明し、回路理論の発展および将来的な排熱発電システムの実用化に資する取り組みである。電源に熱電池を有するDC-DCコンバータ(熱電用電力変換回路)は、電源と負荷をインピーダンスマッチングさせ、熱電池から最大電力を取り出す電力整合機能が求められる。2018年度は、熱電池の低電圧・高電流出力特性に鑑み、電流制御DC-DCコンバータに焦点を絞り、回路パラメータの変化に伴い本回路に生じる分岐現象の解析を行うことを主目的として取り組んだ。以下、具体的な取り組み内容と得られた成果について報告する。 参照電流値およびスイッチング周波数を分岐パラメータに選び、本回路に生じる分岐現象の解析・分岐構造の解明を行った。まず、当該年度予算で新たに購入した熱試験装置を用い、KELK社製熱電池に280度の温度差を設けて出力特性を計測し、モデル化した。次に、熱電池を接続したDC-DCコンバータの回路方程式を導出し、解軌道をクロック周期毎に離散化したポアンカレ写像を定義した。ポアンカレ写像に基づき、参照電流値またはスイッチング周波数を分岐パラメータとした1次元および2次元分岐図を計算し、本回路の動的挙動を広いパラメータ空間から可視化可能な数学的枠組みの構築を完了したとともに、回路動作を検証した。また、電流制御DC-DCコンバータ全般に適用可能な、モノドロミ行列を用いた汎用的安定性解析手法を提案した。得られた研究成果は、学術論文および国際会議にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目標は、 (1) 参照電流値およびスイッチング周波数を分岐パラメータに選び、本回路に生じる分岐現象の解析・分岐構造の解明を実施 (2) 熱電池を接続したDC-DCコンバータに適用可能な安定性解析手法の構築 であった。 (1)の分岐現象の解析・分岐構造の解明については、熱電池を接続したDC-DCコンバータの解軌道をクロック周期毎に離散化した離散写像をベースに、参照電流値またはスイッチング周波数を分岐パラメータとした1次元および2次元分岐図を計算し、本回路に生じる分岐現象と分岐構造を調査した。得られた研究成果は、当該年度中に国際会議にて発表済みであり、現在は継続的に学術論文への成果発表準備段階にあり、当初目標を達成したと考えている。 (2)の熱電回路に適用可能な安定性解析手法の構築については、解軌道の摂動に注目したモノドロミ行列を用いた安定性解析手法を構築し、学術論文にて得られた成果を報告した。本手法は回路方程式が常微分方程式で記述することができない場合についても回路の安定性を解析可能な汎用的手法であるため、熱電池を接続したDC-DCコンバータにも十分適用可能な安定性解析手法であり、当初目標は達成されたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の取り組みを経て、熱電池を接続した電流制御DC-DCコンバータの分岐構造が明らかになり、熱電池から最大電力を得るための最適な参照電流値とスイッチング周波数が推定できるようになった。これらの2018年度に得られた研究成果を、国際会議または学術論文にて報告する。 他方、熱源の温度変化に伴い、熱電池の出力電力は変化するため、これに合わせて参照電流値の最適値は、適宜更新する必要がある。したがって、2019年度は熱電池から最大電力を取り出すための最大電力整合アルゴリズムを提案・実装する。本手法は、出力電力算出ステップ、回路動作安定化ステップ、出力電力調整ステップからなる。本手法を計算機実装し、有効性を確認することを達成目標に設定する。また、本取り組みにおいて有用な成果が得られた場合には国際会議または学術論文における成果発表を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、研究代表者が学内業務等の理由で国内外の会議への参加日程の確保ができず、代わりに本研究課題の遂行に実質的にも関わった学生を中心に得られた研究成果を発表した。このため、会議参加費や旅費等で当初予定した金額を下回り、次年度使用額が生じた。研究取り組み最終年度となる2019年度は、積極的に得られた研究成果を発表することを予定しているため、次年度使用額は会議参加費や旅費等にあてる計画である。
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