研究課題/領域番号 |
18K18129
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小山 佳祐 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20817415)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 近接覚センサ / 高速ロボット / インハンドマニピュレーション / 回転操作 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトでは各指に近接覚センサを備えた多指ハンドによる物体のインハンドマニピュレーション(回転操作)の実現を目指している.具体的には接触面の法線を回転軸とする物体の回転角度を近接覚センサで検出し,この回転量が一定となるようにハンド指先位置や姿勢をリアルタイムにフィードバック制御を行う.これまでに,多指ハンドで把持したリモコンの電池蓋を高速に挿入する作業を実現した.ただし,センササイズが厚み方向に大きいことにより,指先位置・姿勢の移動空間が制限される問題があった.また,センサ情報から正確な物体回転角度を検出するためのキャリブレーション手法に課題があることが判明した.前年度および本年度はこれらの課題解決のための研究を推進した. 前年度はセンサの高速性と計測精度の性能を維持しつつ,センサをサイズダウンするための信号処理系を開発した.これにより,物体回転操作時の指先の作業空間が増大し,インハンドマニピュレーションに適した構成となった.本年度はさらにセンサ出力から物体の回転角度を正確に検出するためのキャリブレーション手法(機械学習)を提案し,その設計手順を明確にした.本モデルは一般的な機械学習手法と同様に教師あり学習を行うが,この際にネットワーク上層の重みを複数パターン用意し,距離レンジに応じてこの複数の重みを学習させる.これにより,学習後は上層の重みを距離レンジに応じて動的に切り替えて正確にキャリブレーションを行うことが可能となる.長所としては汎用マイクロコントローラでも1ms以内に実行可能な点があり,また以前のキャリブレーション手法よりも正確に出力の変換が可能な点がある. 本年度は初期検討として物体面との距離と傾き角度の検出を行った.この結果から,市販のマイクロコントローラで1ms以内にキャリブレーションを実行可能であり,かつ正確な変換が可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近接覚センサの出力から,把持対象物の回転角度(接触面法線方向を回転軸と定義)を検出するにあたり,高速・高精度なキャリブレーション手法が必要となった.本年度はこのための手法として二段階ニューラルネットワークモデルを提案し,初期検討として物体面との距離と傾き角度検出を行った.本モデルは物体との距離レンジに応じてモデル上層の重みを動的に切り替えることで正確なキャリブレーションを行う.モデルの層を深層化せずに高精度な変換が可能であるため,汎用マイクロコントローラに容易に実装可能であり,1ms以内に計算を実行可能である.ただし,重みの切り替え方法に課題があり,さらに物体回転角度の検出には今現在至っていないため,区分は「やや遅れている」とした. このほか細かい進捗状況としては近接覚センサアルミカバーの設計・開発と実験装置の自動化がある.これまではセンサ基板が露出した状態で計測を行ってきたが外部からの電磁ノイズの影響を受けやすい問題があった.そこで,センサ基板全体を覆う専用のアルミカバーを設計・開発した.また,実験装置を汎用オンボードコンピューティングボード(raspberrypi)を用いて自動化することで,二段階ニューラルネットワークの訓練に必要な距離・傾き角度ラベル付きのセンサ出力のデータセットを効率的に収集可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は二段階ニューラルネットワークを用いた物体回転角度の検出と,ロボットハンドでのインハンドマニピュレーション(回転操作)の実現を目指す.このためには,まず物体回転角度の特徴量をセンサ出力から容易に抽出可能とするためのセンサLEDの発光パターン検討が必要である.具体的には現行のセンサは二次元的な断面での物体面との距離と傾き角度の検出に特化した発光パターンであるが,センサLED8個による個別の反射光強度を検出可能な発光パターンとすることで三次元的な反射光強変化を検出する.これらの複数の反射光強度の前処理を繰り返し変更して逐次的にキャリブレーションを行うことで高精度変換のためのLED発光パターンを検討する.また,物体回転量をラベルとするセンサ出力のデータセットを効率良く収集するための実験装置の構築も行う.これは前年度に構築した汎用オンボードコンピュータボードのシステムを再利用し,自動回転ステージを追加する形で実験装置の拡張を行う.最後に他の研究プロジェクトで開発したマグリンケージハンドに近接覚センサを搭載し,高度なインハンドマニピュレーションの実現を目指す.
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