研究課題/領域番号 |
18K18134
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
萩原 良信 立命館大学, 情報理工学部, 講師 (20609416)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 転移学習 / 記号創発ロボティクス / 教師なし学習 / カテゴリ / 生成モデル / ベイズ推論 / 生活支援ロボット / 概念 |
研究実績の概要 |
研究代表者が提案してきたマルチモーダル情報に基づく場所概念形成モデルを拡張して、多様な環境での効率的な学習を可能とする転移学習モデルを構築した。転移学習モデルは、場所のカテゴリ毎の観測情報を生成するモデルパラメータを複数の環境で共通に学習する事を可能としたモデルである。この場所概念転移学習モデルを用いて40環境での転移学習を社会的知能発生学シミュレータ:SIGVerseにおいて実施し、場所における名前と位置の予測精度から学習効率を定量的に評価した。その結果、名前の予測と位置の予測の両方の結果において場所概念の転移学習モデルが効果的な場所の学習を可能する事が示された。 現在、上記の研究成果について学会発表論文一件が採択済みであり、原著論文一件の執筆を進めている状況である。 また、当該研究に関係する実績として、社会的知能発生学シミュレータ:SIGVerseを用いた国際的な知能ロボットの大会である World Robot Summit 2018(経済産業省NEDO主催)の Service Category, Partner Robot Challenge (Virtual) に立命館大学、大阪工業大学、岡山県立大学、玉川大学の合同チームで出場し、WRS実行委員長賞を受賞した。 場所概念の学習・評価実験のためのシミュレーション環境と大規模マルチモーダルデータセット、それらを効率的に処理する計算論モデルは、場所概念のプロトタイプ獲得の実験に不可欠な要素技術であり、31年度の研究計画への基盤技術を確立した。 本研究課題に関連する研究成果として、生活支援ロボットによる場所概念に基づく片付けアルゴリズムの構築、マルチエージェントにおける記号創発と概念形成のダイナミクスのモデル化を行った。これらの研究成果について、原著論文二件を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた場所概念の転移学習モデルを構築し、プロトタイプ獲得のための基盤技術を確立した。構築した転移学習モデルが有効に機能している事は、仮想環境での大規模データセットを用いた定量的な実験から確認できた。これにより、場所概念のプロトタイプ獲得に不可欠な大規データセットを用いた場所概念の効果的な学習が可能となった。場所概念のプロトタイプの獲得には、これまで研究代表者が扱ってきた概念の抽象性ではなく、概念の中心性にアプローチしなければならない。概念の抽象性は、環境や事象に対して汎用的な情報を統計的に扱う事により獲得できた。概念の中心性は、概念間における典型性を情報尺度により計算する事で獲得する。これを実現する計算論モデルは、既に構築済みであり、学習済みの場所概念転移学習モデルのモデルパラメータから計算可能である。場所概念転移学習モデルの原著論文の執筆と並行してプロトタイプ獲得の実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
31年度は、社会的知能発生学シミュレータ:SIGVerseを用いて大規模な場所概念の転移学習によるプロトタイプの獲得を行う。また、実世界のユーザが仮想世界に没入してロボットに教示を行う事が可能であるSIGVerseの特性を活用して、多様なユーザからの観測に基づく場所の名前の教示データを獲得する事でデータセットの大規模化を図り、統計データの質を向上させる。現在は、40環境1ユーザのデータセットを用いているが、これを100環境10ユーザまで拡張する事を目指す。 また、概念間における典型性を数値的に扱うための情報的尺度について情報理論における複数の計算論モデルを用いた比較実験を行い、妥当性について検証する。 モデルの妥当性を検証するために、獲得したプロトタイプに基づく未観測情報(名前や位置)の予測を行い、被験者の予測結果を正解として精度を定量的に評価する。例えば、「リビング」という言語情報が観測された場合に予測する物体情報や位置情報を被験者の結果と比べる方法がある。これにより、どのモデルが人の認知の結果に近い予測を得るプロトタイプの獲得を可能とするか評価する。 実験は、シミュレータを用いたオフラインのプロセスによって実施するため、モデルパラメータを切り替えた複数のモデルの評価をパラレルに実施可能である。さらに、研究代表者が連携研究者として参加する脳科学や認知科学に関係するプロジェクトにおける知見を得ながらモデルの推敲と評価を繰り返す事で、構成論的な枠組みにおけるモデルの妥当性についても考察する。
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備考 |
World Robot Summitにおける入賞の記事:「R-GIRO「次世代人工知能と記号学の国際融合研究拠点」がワールドロボットサミットの競技会で入賞」,所属研究機関の雑誌における研究紹介の記事:「人間の子どもと同じように言葉や概念を獲得していく人工知能」,研究者のウェブサイトにおける研究紹介の記事:「RESEARCH Yoshinobu Hagiwara's web site」
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