研究課題/領域番号 |
18K18140
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
阿部 真人 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 特別研究員 (60758027)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 探索行動 / レヴィウォーク / 臨界点 / 非線形ダイナミクス / Zipf則 / 活動量データ |
研究実績の概要 |
人間の行動パターンにおけるスケーリング則を解析し、認知機能との関係を明らかにすることで、行動パターンのプロセス解明と認知機能低下の予測および予防手法の開発を目指している。2019年度は、主に3つの課題に取り組んだ。1つ目は、高齢者の会話における単語使用の大規模データを取得し、その単語の頻度のスケーリング則を解析し、スケーリング則の指数と認知機能との関連性を発見した。これにより認知機能を会話データから予測する手法の開発につながることが予想される。その結果を論文にまとめ、Sci. Rep.に投稿し現在査読中である。2つ目は、探索行動パターンを生む脳の数理モデルを開発し、普遍的にみられるスケーリング則であるレヴィウォークのパターンが非線形ダイナミクスにおける臨界状態と関連することを明らかにし、行動の多様性創出に一役買っていることが示唆された。これにより脳のダイナミクスの性質とその機能を結びつけることが可能になると考えられ、認知機能の低下をメカニズムレベルから考察できる可能性がある。その結果を論文にまとめ、PNASに投稿し現在改訂中である。3つ目は、2018年度に高齢者を対象に取得した移動・行動パターンの時系列データと、英国の大規模データバンクであるUKBiobankのデータを用い、活動時系列データにみられるダイナミクスのスケーリング則を解析し、認知機能や主観的幸福度との関連性を明らかにした。現在、その結果をまとめて論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験データにおける認知機能との関連性の発見だけでなく、その理論モデルも構築でき、論文執筆を終え投稿した段階まで進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
高齢者の探索行動の実験を行うための、シンプルなフレームワークを作り、実験を行う。その行動パターンと認知機能の関連性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ジャーナルの掲載料として残すため、一件、国際会議に行く予定をやめたから。本年度は投稿中の論文がacceptになることが予想されるので、掲載料として払う予定である。
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