研究課題/領域番号 |
18K18141
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
西田 知史 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 主任研究員 (90751933)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人工知能 / 深層学習 / 畳み込みニューラルネット / 転移学習 / 脳 / fMRI |
研究実績の概要 |
これまでにfMRI実験において収集した69名分の脳活動データに基づき、任意の視聴覚情報を深層学習に入力したうえで、いったん脳情報を介して、入力と結びついた認知ラベルを推定する手法の開発と改良を行った。特定の課題で訓練した機械学習のモデルを、別の課題に適用する枠組みを転移学習と呼ぶが、本手法は、脳情報を仲介して機械学習モデルの転移学習を行う方法論とみなせるため「脳媒介転移学習(Brain-mediated transfer learning; BTL)」と名付けた。そして、BTLを用いることで、脳情報を介さない既存の深層学習の転移学習との比較において、様々な課題(映像コンテンツ知覚の推定、映像から受ける印象の推定、Web広告に対する再生完了率等の推定、TV広告に対する好感度の推定、など)で推定精度の向上(汎化性能の向上)がもたらされることを実データによる検証で示した。また精度の向上は、脳情報が有効な推定課題(脳情報単独で推定を行った際に高い精度を示す課題)であるほど顕著に見られることが分かり、脳情報を既存の機械学習モデルに上手く結びつけて、モデルの情報表現を強化していることを示した。以上の成果を、人工知能分野のトップ会議の一つである国際会議AAAI(北米人工知能学会)、および国内学会の人工知能学会全国大会で発表した。その際、聴衆から高い評価を得たとともに、成果がメディアなどでも取り上げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り技術開発に成功し、その成果が権威ある国際学会に採択されて発表を行ったことから、研究は順調に進んでいるといえる。また、開発技術が個性の適用可能か検証するための心理データ収集も完了し、多角的な検証をすでに進めていることから、来年度に本研究が目指した最終的な成果を得ることが十分に期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
収集した心理データを基に、開発技術が知覚・認知の個人差を反映可能であることを検証する。また、そのような反映をより強くするための、技術の改良も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳活動計測のためのMRI実験および知覚の個人差を評価するための心理実験のデータについて、別目的において予め取得していたデータを流用可能となり、データ取得のために必要となったはずの実験被験者謝金が不要となったため、次年度使用額が生じた。それについては、本研究で開発した技術の発展を目的とした、様々な派生技術の開発のために必要となるMRI実験および心理実験の被験者謝金等として利用することを計画している。
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