研究実績の概要 |
肥満は様々な生活習慣病の原因である。重度の生活習慣病の場合死に至ることもあり、肥満状態のモニタリングと適切な治療が重要である。これまでの肥満と総死亡リスクについての研究の多くは、ある一時点での肥満度のみに依存していた。ところが、近年の研究で、体重の変化が大きい人や過去に肥満状態を経験した人の死亡リスクはそうでない人に比べて統計的に優位に高いことがわかってきている。体重の時間変化を考慮した死亡リスク評価が求められているのである。本研究では特に体重の変化の大きい閉経後の女性に注目し、その体重変化のパターンを機械学習により分類し、死亡リスクに大きく関わる変化パターンを特定することを目的にする。本年度はまず簡単な統計モデルから、体重変遷がどの程度重要なのかを評価することにした。米国の閉経後の女性役15,000人を10年に渡って追跡調査したWomen’s Health Initiative (WHI)を分析した。分析にはgrowth mixture modelを用い、体重変化に関しては二次曲線を想定した。その結果、5年でのBMI変化に応じて5パターンに分類された:A) 体重過減少 (5年変化=-6.19 kg/m2; 95% CI=-6.63 to -5.76), B) 体重減少 (-1.97 kg/m2; -2.22 to -1.72), C) 変化なし (0.21 kg/m2; -0.09 to 0.51), D) 体重増加 (2.1 kg/m2; 1.34 to 2.86), E) 体重過増加 (5.36 kg/m2; 5.14 to 5.57)。変化なしグループを基準とすると、それ以外のグループの死亡率が優位に高いことがわかった。つまり、ある時点の体重に関わらず、体重が大きく変化する人は死亡リスクが高くなるということが示唆された。
|