研究実績の概要 |
免疫細胞が確率的な環境下で類似抗原分子を正確に識別するメカニズムを解明するため、抗原識別に関係する化学反応系の確率モデルを構築し、数値シミュレーションやモデルの数理解析により高精度な識別が可能になる条件を調査した。予備研究の時点で考案したモデルの一般化モデルを構築し解析した結果、一般化モデルはこれまでのモデルと比較して定性的に実際の免疫細胞による抗原識別の意思決定に近いタスクを行える能力があることが明らかになった。予備研究の時点では識別精度の定量評価方法が不十分であったため、モデルのダイナミクスと識別精度の関連について深い議論が出来ていなかった。今回識別精度について生物学的に妥当な定量評価方法を考案したために、モデルのダイナミクスの特性との関連を調査できるようになった。これらの結果は「細胞ダイバース」若手ワークショップ、デザイン生命工学研究会などで発表を行った。発表後に主に研究内容の生物学妥当性や実験検証法などについてフィードバックを得たことで、モデルの解析手法の改良に繋がっている。 また、本研究の実施にあたって調査した実験および理論の関連研究をまとめ、レビュー論文を執筆した(Masashi K. KAJITA, (2019). Quantitative biology of ligand discrimination by immune T cells, SEISAN KENKYU, 71(2), 125-132.)。これまでの免疫細胞による抗原識別現象についての分子生物学的研究、定量実験研究、および理論研究をまとめた。本研究のターゲットとなる従来の理論研究では説明がつかない現象について紹介および考察を行った。
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