研究課題/領域番号 |
18K18157
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森田 雅宗 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (90708504)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人工細胞 / リポソーム / 微生物培養 / 人工細胞型インキュベーター / 人工生体システム |
研究実績の概要 |
本年度は,人工細胞(リポソーム)の中に微生物を一細胞レベルかつ生きた状態で封入し,顕微鏡上でリアルタイムに長時間安定して観察する手法を開発し,微生物の増殖する過程を捕捉した。具体的に,界面透過法と呼ばれるリポソーム作成法を利用したマイクロデバイスを用いて,微生物を人工細胞内に封入した。リポソーム内に封入する微生物の個数を,一細胞レベルで封入することができるように制御することに成功した。さらに,微生物の増殖を顕微鏡観察下で長時間観察するためには,スライドガラス上での人工細胞の安定性が重要であるが,スライドガラス上で人工細胞を長時間観察する手法を開発した。このシステムを利用して,実際に人工細胞内での微生物増殖を確認したところ,単一細胞から無数に増殖する様子の観察に成功した。これらの成果について,論文発表2件,特許出願1件行なった。 また,リポソームに限らず,油中水滴,マイクロゲルビーズ内での微生物培養も行なった。油中水滴では,水滴内での微生物増殖を検出するプローブ開発を行い,実際に環境微生物に適合,従来のバルク培養では増殖が確認できなかった微生物の増殖に成功し,プローブの有用性を示すとともに,油中水滴を用いた微生物培養のメリットを示すことができた。この成果については,論文発表1件行なった。また,マイクロゲルビーズ内に複数種類の微生物を封入し,人工的な複合微生物環境による共生・競合実験・リアクター開発に向けて研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で目指す人工細胞型インキュベーター開発に向けて,数pLレベルの空間という栄養が限られた環境で微生物が何時間にもわたり分裂を繰り返すことができた理由の考察などクリアしていかなければならない課題は残っているが,人工細胞型インキュベーターのプロトタイプとなるであろうシンプルな人工細胞(リポソーム)内で,微生物を増殖させることに成功した点から,概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、内部に封入している微生物は1種類のみしか検討していない。今後,様々な微生物に応用するためにも,内部に封入するモデル微生物のバリエーションを増やすとともに,環境微生物などにも取り組んでいき,バイオリソースの確保に進展させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定で使用を考えていたモデル微生物を購入を考えていたが,リソースが当方所属の研究室内にて保管されていたため,新規に購入する必要性がなくなったため。しかし、次年度では新たなモデル微生物の使用を考えているので、そちらの経費に充てる。
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